ウマ血清中PMSGの赤血球凝集抑制反応(HAIRと略)による測定の可能性およびHAIRによるウマの早期妊娠診断の野外応用について検討した結果,次の成績を得た。
1.ウマ血清中のPMSG蛋白と非特異反応物質をメタリン酸-アルカリ中和法で分画分離した。このPMSG蛋白分画でPMSG感作血球によるHAIRは成立した。この方法においてPMSGの生物活性はほぼ定量的に回収された。
2.PMSGに対する各抗原,抗血清との交叉HAIRにおいてPMSGと抗PMSG,抗ESとの抗原抗体反応がみられた。これは体液由来の蛋白質がホルモン蛋白物質の中に不純蛋白質として共存していることを示しているとみられる。
抗PMSG中の抗ES因子は,雄ウマ凍結乾燥血清との反応によりPMSGと抗PMSGの抗原抗体反応系から除去された。交叉HAIRおよびホルモン活性中和試験において特異的にPMSGと抗PMSGの反応が成立しHCG,ES,HS,NRSとの反応は認められなかった。
3.PMSGのHAIRと生物反応を比較したところ,よく一致する結果を示すことが認められた。
4.ウマの妊娠経過に伴う血清中PMSGの消長についてHAIRにより検討した結果,血清中PMSGの証明される時期は個体によって差異がみられるが,授精後30日以前においては血清PMSG価は得られなかった。しかし,その後漸増し,60~90において最大値を示したが,妊娠期の進むに伴い激減し,140日以降においては各ウマともPMSG価は得られなかった。しかしながら,個体による差異はかなり大きい。
5.血清PMSGのHAIRによる早期妊娠診断の可能性について野外応用試験を行ない,生物反応と比較した結果,生物反応陰性のウマ血清はすべてHAIRは陰性であった。生物反応陽性とHAIR陽性は92.4%の高い一致率を示したが,7.6%はHAIR疑陽性または陰性を示した。この原因に関しては個々のウマを診察することが必要であるとみられる。
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