家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
マウス卵子の体外受精に関する研究
II. 精子侵入時期に及ぼす精子体外培養の効果
豊田 裕横山 峯介星 冬四郎
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1971 年 16 巻 4 号 p. 152-157

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抄録

ICR-JCL系成熟雄マウスの精巣上体尾部から採取した精子をKrebs-Ringer-Bicarbonate液を基本とする 培養液内に懸濁させ,5%CO2,95%空気,温度37°Cの条件で3~120分の種々の時間培養した後,体外受精に供した。卵子としてはHCG注射後16~17時間の過排卵卵子を用いた。その結果,体外に培養された精子は雄から採取直後の精子よりも早く卵子に侵入することが明らかとなり,in vitroにおいてマウス精子の受精能獲得が起こることが示唆された。
追記: 本報の投稿後に知ったIwAMATSU&CHANGの最近の報告(J.exp.Zool.175,271,1970)によると,1)精巣上体精子は牛の卵胞液の存在下に授精後約1時間から卵子への侵入を開始し侵入率は授精後5時間まで漸増する。2)牛の卵胞液とともに3~4時間体外培養された精子は新鮮精子よりも早く卵子へ侵入する,ことが報じられている。前報の成績17)に比し侵入時期が早くなっているのは技術的な改良によると推察している。ただし,牛の卵胞液を用いずに精子を前処理する試みはなされていない。

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