イヌ精子の保存に関して稀釈液の組成について実験を行なった。
1. 実験Iでは塩化マグネシウム,塩化カリウム,第2燐酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから成る基本液に,クエン酸ナトリウムおよび酒石酸カリウム•ナトリウムをそれぞれ加えた緩衝液に対して,卵黄(20%)および牛乳(50%)を加えた稀釈液でイヌ精子の保存試験を行なった。その結果,基本液に卵黄および牛乳を加えた場合は,稀釈直後の生存指数は74から66の間で,実験Iでは最もよい成績を示したが,生存日数は3日以内であった。基本液にクエン酸ナトリウムを加えると,稀釈直後の生存率は低下したが,生存日数は4日であった。酒石酸カリウム•ナトリウムはイヌ精子の保存に有効でなかった。
2. 実験IIでは塩化カリウム,第2燐酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムから成る基本液にグリシソ,ペプトソ,卵黄および牛乳をそれぞれ加えた稀釈液を用いてイヌ精子の保存効果を検討した。
基本液にペプトンとグリシンを添加した場合,ペプトンを1g/100 m
lの割合に加えると,稀釈ショックが防止され,生存日数は16日に大幅に延長された。しかし,保存第1日目に生存指数は半減するので,さらに組成を改良する必要がある。イヌ精子に対する保護効果は牛乳よりも卵黄の方が優れている。
3. 実験IIに用いた稀釈液でイヌ精子に対するクロールプロマジンの保存効果を検討した。クロールプロマジンを稀釈液に5mg/100 m
Iの割合に添加した場合,基本液にペプトン,グリシンおよび卵黄を加えた稀釈液において,実験IIの成績よりも若干生存率がよくなった。
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