家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
幼若雌マウスによる絨毛性性腺刺激ホルモンの生物学的検定に関する研究
窪道 護夫
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1972 年 18 巻 2 号 p. 39-50

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抄録

動物用絨毛性性腺刺激ホルモン (HCGと略) 製剤は家畜の繁殖障害の治療並びに生産増強の領域で大いに活用されているが, それらの成果はHCG製剤の品質の良否に支配される。従って, HCG製剤の力価の検定は極めて重要であり, その正しい検定法が要請される。このHCGの国際標準品は第3回ホルモン物質設定会議において設定された。しかし, 効力検定に関しては定めていない1) 。
現在, 本邦では, 動物用HCG製剤の力価検定法として, マウスの60%反応陽性率を基準としたマウス単位法を用いているが2), 力価の表示は万国共通の国際単位によるべきで, その検定法の確立が必要である。しかしながら, HCG製剤の力価検定における生物学的反応に関しては明らかでない点が少なくない。この生物学的反応を解明するには, その作用発現についての基礎的研究, 即ち, 実験動物のHCGに対する反応の特異性, 感受性, 反応精度, 再現性並びにこれらに関する遺伝的, 生理的および環境的諸要因についての研究が重要である。
また, HCGの検定動物としては, HCGに対し感受性が高く, かつ均一な反応を示し, 一時にかなり多くの動物の処理が可能であること, 経済的にも入手が容易であり, 実験動物として取り扱い易いことが重要な条件である。
しかし, これら検定動物としての条件にあう幼若雌マウスのHCGに対する生物学的反応に関しては, 明らかでない点が少なくない。HCGの幼若雌マウスによる生物学的力価検定法を確立するためには, 幼若雌マウスのHCGに対する生物学的反応を詳細に研究することが極めて重要であるとみられる。
本研究は, これらの諸点から, ddマウス並びに近交系マウスを用いて, 感受性の高い幼若雌マウスによる生物学的力価検定法の確立と, その生物学的反応における生理的並びに遺伝的要因に関して, 基礎的に研究をおこなったものである。
まず, ddマウスを用いてHCGに対する生物学的反応を検討し力価検定法の確立をはかり, 次いで, ddマウスによる実験結果でとくに問題となった環境条件では制御されない生体側の変動要因を追求するため, ddマウスと近交系マウスを用いて, マウスの系統によるHCGに対する感受性, その成長過程におけるHCGに対する反応性の変化, さらにHCG反応性に関する遺伝要因にっいて研究をおこなった。

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