交配後10日の正常妊娠,過排卵処理妊娠および過排卵処理不妊家兎の卵巣について,酵素組織化学的検出を行なったところ,つぎのような成績が得られた。
正常妊娠家兎の黄体のsteroiddehydrogenase(SDH)については,3α-OH-SDH(NAD),Δ
5-3β-OH-SDH(DHA基質,NAD,NADP;pregnenolone基質,NAD),11β-OH-SDH(NAD)16β-OH-SDH(NAD)および17β-OH-SDH(NAD)の活性は弱く認められたが'3α-OH-SDH(NADP),Δ
5-3β-OH-SDH(pregnenolonei基質,NADP),11β-OH-SDH(NADP),16β-OH-SDH(NADP)および17β-OH-SDH(NADP)は痕跡程度にしか観察できなかった。その他のdehydrogenase(DH)活性については,G-6-PDH,MDH(NAD)活性は強く,SuDH,LDHは中等度,MDH(NADP),α-GDHは弱く,β-HDH,GDHは痕跡的であった。さらに,AcidPhaseは中等度に,Etaseは弱い活性を示した。
過排卵処理後妊娠した家兎の黄体では,LDHおよびEtase活性が正常妊娠のものより低かったが,その他の酵素活性は,いずれも正常妊娠のもと変わらなかった。これに対して,過排卵処理後不妊に終った家兎にあっては,妊娠したものに弱いながら活性を示したOH-SDHはいずれも低い活性を示し,同時にSuDH,MDH(NAD)およびα-GDHの活性も低かった。過排卵処理家兎にみられる血胞の酵素活性は黄体の場合とほぼ同様で,妊否による違いも黄体と同じ傾向を示した。
間質腺の酵素活性は,黄体や血胞のそれにくらべて,Δ
5-3β-OH-SDH,α-GDHが強く現われ,これに反してAcidPhaseは低かったが,その他の酵素活性には差がみられなかった。また,正常妊娠,過排卵処理妊娠および過排卵処理不妊家兎の間では,SDH活性にはまったく変化が現われず,その他の酵素についても,処理家兎においてα-GDHおよびEtase活性の低下がみられた程度であった。
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