家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
18 巻, 2 号
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  • 窪道 護夫
    1972 年 18 巻 2 号 p. 39-50
    発行日: 1972/10/01
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    動物用絨毛性性腺刺激ホルモン (HCGと略) 製剤は家畜の繁殖障害の治療並びに生産増強の領域で大いに活用されているが, それらの成果はHCG製剤の品質の良否に支配される。従って, HCG製剤の力価の検定は極めて重要であり, その正しい検定法が要請される。このHCGの国際標準品は第3回ホルモン物質設定会議において設定された。しかし, 効力検定に関しては定めていない1) 。
    現在, 本邦では, 動物用HCG製剤の力価検定法として, マウスの60%反応陽性率を基準としたマウス単位法を用いているが2), 力価の表示は万国共通の国際単位によるべきで, その検定法の確立が必要である。しかしながら, HCG製剤の力価検定における生物学的反応に関しては明らかでない点が少なくない。この生物学的反応を解明するには, その作用発現についての基礎的研究, 即ち, 実験動物のHCGに対する反応の特異性, 感受性, 反応精度, 再現性並びにこれらに関する遺伝的, 生理的および環境的諸要因についての研究が重要である。
    また, HCGの検定動物としては, HCGに対し感受性が高く, かつ均一な反応を示し, 一時にかなり多くの動物の処理が可能であること, 経済的にも入手が容易であり, 実験動物として取り扱い易いことが重要な条件である。
    しかし, これら検定動物としての条件にあう幼若雌マウスのHCGに対する生物学的反応に関しては, 明らかでない点が少なくない。HCGの幼若雌マウスによる生物学的力価検定法を確立するためには, 幼若雌マウスのHCGに対する生物学的反応を詳細に研究することが極めて重要であるとみられる。
    本研究は, これらの諸点から, ddマウス並びに近交系マウスを用いて, 感受性の高い幼若雌マウスによる生物学的力価検定法の確立と, その生物学的反応における生理的並びに遺伝的要因に関して, 基礎的に研究をおこなったものである。
    まず, ddマウスを用いてHCGに対する生物学的反応を検討し力価検定法の確立をはかり, 次いで, ddマウスによる実験結果でとくに問題となった環境条件では制御されない生体側の変動要因を追求するため, ddマウスと近交系マウスを用いて, マウスの系統によるHCGに対する感受性, その成長過程におけるHCGに対する反応性の変化, さらにHCG反応性に関する遺伝要因にっいて研究をおこなった。
  • 石島 芳郎, 佐久間 勇次, 石田 一夫
    1972 年 18 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 1972/10/01
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    交配後10日の正常妊娠,過排卵処理妊娠および過排卵処理不妊家兎の卵巣について,酵素組織化学的検出を行なったところ,つぎのような成績が得られた。
    正常妊娠家兎の黄体のsteroiddehydrogenase(SDH)については,3α-OH-SDH(NAD),Δ5-3β-OH-SDH(DHA基質,NAD,NADP;pregnenolone基質,NAD),11β-OH-SDH(NAD)16β-OH-SDH(NAD)および17β-OH-SDH(NAD)の活性は弱く認められたが'3α-OH-SDH(NADP),Δ5-3β-OH-SDH(pregnenolonei基質,NADP),11β-OH-SDH(NADP),16β-OH-SDH(NADP)および17β-OH-SDH(NADP)は痕跡程度にしか観察できなかった。その他のdehydrogenase(DH)活性については,G-6-PDH,MDH(NAD)活性は強く,SuDH,LDHは中等度,MDH(NADP),α-GDHは弱く,β-HDH,GDHは痕跡的であった。さらに,AcidPhaseは中等度に,Etaseは弱い活性を示した。
    過排卵処理後妊娠した家兎の黄体では,LDHおよびEtase活性が正常妊娠のものより低かったが,その他の酵素活性は,いずれも正常妊娠のもと変わらなかった。これに対して,過排卵処理後不妊に終った家兎にあっては,妊娠したものに弱いながら活性を示したOH-SDHはいずれも低い活性を示し,同時にSuDH,MDH(NAD)およびα-GDHの活性も低かった。過排卵処理家兎にみられる血胞の酵素活性は黄体の場合とほぼ同様で,妊否による違いも黄体と同じ傾向を示した。
    間質腺の酵素活性は,黄体や血胞のそれにくらべて,Δ5-3β-OH-SDH,α-GDHが強く現われ,これに反してAcidPhaseは低かったが,その他の酵素活性には差がみられなかった。また,正常妊娠,過排卵処理妊娠および過排卵処理不妊家兎の間では,SDH活性にはまったく変化が現われず,その他の酵素についても,処理家兎においてα-GDHおよびEtase活性の低下がみられた程度であった。
  • 石田 一夫
    1972 年 18 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 1972/10/01
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    発生初期におけるハムスター卵子の核酸の分布と動態について,acridineorangeを螢光色素とした螢光法によって生体観察を行なったところ,およそ,次のような結果が得られた。
    未受精卵子の核は分裂像を呈して極体の近くにみられ,極体にもクロマチン穎粒が認められた。これらは,いずれも強い緑黄色の螢光(DNA)を発した。侵入精子の頭部には中等度の螢光がみられた。前核卵子および2分割卵子において,核の螢光は弱くなったが,4分割卵子からblastocystに発達するに従って,核は次第に小型化し,螢光は強まることが観察された。いずれの時期の卵子においても,細胞質は燈赤色の螢光(RNAとmononucleotides)を示した。すなわ,前期以前の卵子では強い螢光が細胞質全域に一様に観察されたが,2分割卵子において螢光は弱まり,核の周辺に集まる傾向を示した。4~8分割卵子において,螢光は核の周囲に局在して認められた。分化卵子および初期のblastocystにおいて,trophoblastとinner cellセこは強い橙赤色螢光が細胞質全域にわたって観察された。いずれの卵子においても核小体には螢光を認めることは出来なかった。
  • 樋浦 善敬, 河野 憲太郎
    1972 年 18 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 1972/10/01
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    鶏精子形態観察用の標本作成並びに湿式染色法による鶏精子の生死判定について検討を加えた。
    1. 鶏精子形態観察用の標本作成法について
    従来の慣行法(方法I),盛り式法(方法II),染色液稀釈法の湿式(方法III),染色液稀釈法の乾式(方法V),ホルマリン稀釈法(方法V)につき比較検討を行なった。方法Iは人工的所産物と考えられる頭部の膨化•波状変形が塗抹面の起始部や周縁部に多く出現し,コイル状に轡曲している尾部の奇形もかなり多かった。方法IIIでは尾部が微細な波状を呈する。奇形率はどの方法よりも低値であった。方法IIでは色素の小塊が浮游し観察の障害となり,中片部並びに尾部の奇形がかなり認められた。方法IVでは頭部がやや膨化するが,中片部並びに尾部はどの方法よりも自然状態に近かった。方法Vでは精子の大半がコイル状に彎曲していた。
    以上のことから方法II,すなわち盛り式が最適であると考えた。
    2. 湿式染色法による鶏精子の生死判定について
    1) 色素14種について検討した結果,酸性を選び,さらに脱塩水を含む5種の溶媒について比較したところ,染色精子率は溶媒間に差がなかった。精子の運動性は脱塩水の場合にのみ不動であったので計測の容易性の点で脱塩水が適していると考えた。
    2) 湿式標本の観察部位と染色精子率との関係を調べたところ,標本の中央部の染色精子は周縁部より少なく,かつ時間経過による変動も小さかったので,中央部が適当であると考えた。
    3) 染色精子率と観察所要時間との関係について,染色精子率は時間の増加と共に幾何級数的に高くなったので,観察計測する時間は3分前後で終ることが望ましいと考えた。
    4) 精液を水およびリンゲル液で稀釈し,室温放置と42°C加温の際における染色精子率の時間的変動を調査した結果,室温放置の場合の増加ははなはだ緩慢であるのに対し,稀釈,加温の場合は2時間以降において増加が著しく急激であった。すなわち死滅精子が染色されるためには,死後かなりの時間的経過を必要とすることがわかった。また不動精子が染色精子より常に多かったので,採取後に死滅した精子は本法では算定不可能であることが認められた。
  • III. 裸化卵子の受精成績について
    福田 芳詔, 岡田 修, 豊田 裕
    1972 年 18 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1972/10/01
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ICR-JCL系成熟雌マウスを用いて,裸化卵子と無処理卵子のin vitroでの受精(精子侵入と前核形成)について比較した。卵丘細胞の除去は,HCG注射後16~17時間にとり出した過排卵卵子をヒアルロニダーゼで卵丘細胞をバラバラにし,3回移し替え洗滌して行なった。授精には成熟雄の精巣上体尾部から採取し,前処理(授精前1時間培養)した精子を用いた。その結果,受精率は裸化卵子で71.3%,無処理卵子で84.7%,多精子受精卵の割合は裸化卵子で10.1%,無処理卵子で11.4%で両区の間に有意差は認められなかった。
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