家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
発生初期におけるハムスター卵子の核酸の螢光法による観察
石田 一夫
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1972 年 18 巻 2 号 p. 59-62

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抄録

発生初期におけるハムスター卵子の核酸の分布と動態について,acridineorangeを螢光色素とした螢光法によって生体観察を行なったところ,およそ,次のような結果が得られた。
未受精卵子の核は分裂像を呈して極体の近くにみられ,極体にもクロマチン穎粒が認められた。これらは,いずれも強い緑黄色の螢光(DNA)を発した。侵入精子の頭部には中等度の螢光がみられた。前核卵子および2分割卵子において,核の螢光は弱くなったが,4分割卵子からblastocystに発達するに従って,核は次第に小型化し,螢光は強まることが観察された。いずれの時期の卵子においても,細胞質は燈赤色の螢光(RNAとmononucleotides)を示した。すなわ,前期以前の卵子では強い螢光が細胞質全域に一様に観察されたが,2分割卵子において螢光は弱まり,核の周辺に集まる傾向を示した。4~8分割卵子において,螢光は核の周囲に局在して認められた。分化卵子および初期のblastocystにおいて,trophoblastとinner cellセこは強い橙赤色螢光が細胞質全域にわたって観察された。いずれの卵子においても核小体には螢光を認めることは出来なかった。

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