家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
発生初期におけるハムスター卵子のステロイド脱水素酵素の組織化学的研究
新村 末雄石田 一夫
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1976 年 22 巻 1 号 p. 13-17

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抄録

卵巣,卵管および子宮内におけるいろいろな発生時期のハムスターの卵子について,Δ5-3β-OH-SDH(基質にDHAとpregnenoloneを使用)と17β-OH-SDH(基質にestradiol-17βとtestosteroneを使用)を組織化学的に検出したところ,およそ次のような成績が得られた。
卵巣内の原始,第1次,第2次およびグラーフ氏卵胞中の卵子には,いずれの種類の0H-SDH活性も認められなかった。卵管内において,Δ5-3β-OH-SDHと17β-OH-SDHの活性は,未受精卵子,受精未分割卵子,ともに高い活性を示した。これらの酵素活性によって生じたジホルマザン顆粒は細胞質に一様に分布していた。酵素活性は2~4細胞期にかけて次第に低下したが,8細胞期において再び上昇した。ジホルマザン顆粒は分割球の核の周辺と細胞質の表層部にとくに多くみられた。胞胚では,Δ5-OH-SDH(DHA)と17β-OH-SDH(testosterone)の活性がやや低下したが,そのほかの酵素活性は維持された。ジホルマザン顆粒は内細胞とトロホブラストに同じ強さで現れ,細胞質全般に認められた。
8細胞期と胞胚期の卵子における強い酵素活性の存在は分割球の分化と関係しているように思われる。いっぽう,排卵直後の1細胞期の卵子における酵素活性の意義は不明であるが,受精とは無関係のように思われる。

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© 日本繁殖生物学会
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