抄録
10頭の雑種雄犬を用いて肉眼解剖学的並びに組織学的方法により性成熟の過程を検索した。
睾丸の絶対重量は110日を過ぎると急激に増加する。睾丸重量の比体重値もやはり110日以後明らかに上昇する。睾丸降下は100日前後に於いて完了するように思われる。
精細管直径は出生後減少を続け90日のものでは最低であつた.それ以後は急激に増大し精子頭部が出現する頃になると147μに達する。
第1次精母細胞は110日では少数認められ,150日令のものでは相当数形成されるようになる。間細胞の分化も略々この頃から活動的な様相を示し始める。
幼若期精細管内には大型細胞が存在するが日令の進行と共にこれらは次第に減少し150日のものでは殆んど消失している。
斯くの如く,出生後の睾丸に出現する一時的退縮は凡そ90日で最大となりそれ以後個有の性腺分化の機能が始動するものと考えられる。