家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
牛の空胎防除に関する研究III.カバーグラス法による子宮頸管粘液像について
佐々木 博一前田 勉津村 巖
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1959 年 5 巻 3 号 p. 108-110

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抄録

1) C.Mの塗抹乾燥標本に晶出した結晶像は水分に対して不安定で破壊され易く又乾燥法或は塗抹の厚薄によつてその像に差異を生じ易いが,吾々の所謂C.G法はこれらの外的感作に影響されることなく極めて安定しており,操作手技は簡単にして臨床的に価値あることを認めた。
2)粘液像を直後像及び乾燥像に区分し,それぞれの出現像の形状により9型に分類して観察した結果,性周期の判定が可能である。特に直後及び乾燥像の両者を併用組合せることにより一層顕著となることを認めた。即ち発情期では直後像はI型が,乾燥像はIII単形,V型が高い出現率を示した。
黄体期には直後及び乾燥像共にIII棘形,皿桿形及びIV型の出現が目立ち,両期の移行期には直後像ではIII枝形が,乾燥像ではII型,III長形,III羽形の出現が多くなる傾向を認めた。
3)妊娠期においては直後及び乾燥像共にIII棘形,III桿形及びIV型が特異的に出現し,その他の型像は殆んど認めなかつた。この点妊娠診断の補助として価値あることを認めた。
4)子宮内膜炎を有する例においては健康例に比して,発情期では直後像にIII枝形が,乾燥像にIII網形,III樹形が多くなり,黄体期では直後像,乾燥像共にIII桿形の出現が少く更に乾燥像にIV型の出現は全例に認めなかつた。
以上の如く健康例に比し移行期像が多く出現し,周期の特異型像が認め難くなることは組織学的に分泌腺の機能に異常を認められること10),又結晶形成能の低下,内分泌機能の失調3,11)及びC.Mの化学的組成の変化11)等の事実から,更にC.Mの性状特に粘稠度の変化,架片量及び細胞成分等6)に影響されるものと考えるが,尚今後の研究に俟ちたい。

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