乳癌その他の乳腺腫瘍に於いては屡々下垂体,副腎などの内分泌腺に線維腫の発生がみられる3)ことが知られ.ているが,著者の採取した犬の乳腺線維腫に於いてもその2例に於いて下垂体や副腎に腫瘍の発生がみられた。斯様な個体の下垂体では正常のものに較べると腺体もトルコ鞍も異常に拡大し,前葉では多数の酸好性細胞と少数の肥大した塩基好性細胞がみられる。副腎も腫瘍細胞や結合組織の増殖,血液細胞の浸潤で正常の2倍以上に大きくなり,球状帯や束状帯の細胞機能の尤進がみられる。乳腺に於ける腫瘍発生の原囚の一つとして性ホルモンの分泌異常,特にエストロゲンの分泌過多が考えられている3,4)が卵巣の観察所見では多数の胞状卵胞が存在した。甲状腺に於いては余り著明な差はみられなかつたが対照に比し,一部ではやや機能亢進の像がみられた。