家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
甲状腺機能と性機能との関係についての実験的研究
V. 成熟ラッテの甲状腺機能と下垂体機能との関係について
島 澄夫
著者情報
ジャーナル フリー

1963 年 9 巻 2 号 p. 44-48

詳細
抄録

1) 甲状腺機能の変動による,下垂性腺刺激機能の変化を,脾内移植した卵巣片の発育状態をもつて,しらべた。雄,去勢雄,雌ラッテの脾内に移植した卵巣の発育は,甲状腺機能の変動に対して,殆んど何の影響も受けなかつた。しかし,去勢雌ラッテの脾内に移植した卵巣の発育は,甲腺機能の変動によつて,大きく影響され,甲状腺機能低下時において,その発育は著るしく阻害された。しかし,これに,甲状腺ホルモン投与を行い,甲状腺機能を補償するときは,卵巣片の発育肥大は,回復する傾向が得れた。また,甲状腺機能低下時に,PMSを投与すると,移植卵巣は,著るしい,発育肥大を示した。これによつて,甲状腺機能低下時には,下垂体の性腺刺激能が減退していることが考察された。
2) 下垂体の性腺刺激ホルモン含量を排卵試験によつて調べ,甲状腺機能下時において,下垂体の性腺刺激ホルモン含量に著るしい減少を認めた。さらに,これに,甲状腺ホルモンを投与すると,同ホルモンの含量は増加する傾向が得られた。これによつて,甲状腺ホルモンは下垂体に作用して,性腺刺激ホルモンの生産に促進的に働らくことが推測された。

著者関連情報
© 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top