1) 甲状腺機能の変動による,下垂性腺刺激機能の変化を,脾内移植した卵巣片の発育状態をもつて,しらべた。雄,去勢雄,雌ラッテの脾内に移植した卵巣の発育は,甲状腺機能の変動に対して,殆んど何の影響も受けなかつた。しかし,去勢雌ラッテの脾内に移植した卵巣の発育は,甲腺機能の変動によつて,大きく影響され,甲状腺機能低下時において,その発育は著るしく阻害された。しかし,これに,甲状腺ホルモン投与を行い,甲状腺機能を補償するときは,卵巣片の発育肥大は,回復する傾向が得れた。また,甲状腺機能低下時に,PMSを投与すると,移植卵巣は,著るしい,発育肥大を示した。これによつて,甲状腺機能低下時には,下垂体の性腺刺激能が減退していることが考察された。
2) 下垂体の性腺刺激ホルモン含量を排卵試験によつて調べ,甲状腺機能下時において,下垂体の性腺刺激ホルモン含量に著るしい減少を認めた。さらに,これに,甲状腺ホルモンを投与すると,同ホルモンの含量は増加する傾向が得られた。これによつて,甲状腺ホルモンは下垂体に作用して,性腺刺激ホルモンの生産に促進的に働らくことが推測された。
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