家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
非繁殖季節において発情,排卵誘起された雌羊の受胎率に及ぼすGnRHおよび抗PMSG注射の効果
福井 豊武中 慎治百目鬼 郁男小野 斉
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1984 年 30 巻 2 号 p. 108-116

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抄録
非繁殖季節(4~5月)において,発情,排卵を誘起した成熟サフォーク種雌羊,59頭の受胎率に及ぼすGnRHおよび抗PMSG注射の効果を比較検討した。発情,排卵は60mg合成黄体ホルモン(MAP)を含む腟内スポンジ(以下MAPスポンジと記す)を9日間腟内深部へ挿入し,その除去時に750IU PMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン)を投与することにより誘起した。
MAPスポンジ除去とPMSGの処置後5日間,6時間毎に発情観察を行ない,発情雌羊には2ml生理食塩水(対照区:I群),3ml(150μg)GnRH溶液(コンセラール:II群)または2ml希釈ウサギ抗PMSG血清(III群:PMSG750IUに相当する力価を中和する抗体価をもつ)を筋肉注射した。そして,発情発見後9時間目に0.2~0.25mlの新鮮原精液を頸管外口部内に人工授精し,受胎率(70~90日妊娠率および分娩率),多産率を比較した。各群10頭につきPMSG処置後8日目に開腹手術により卵巣動態(黄体数直径5mm以上の卵胞数)を観察,記録した。さらに,各群5頭において,処置後22日間継続的に頸静脈より採血し,血漿中プロジェステロン(P),エストラジオール-17β(E2)および黄体ホルモン(LH)をRIA法により測定した。
各群における授精頭数/処置頭数は18/19(I群),19/20(II群)そして19/20(III群)であった。妊娠率(I群:27.8%,II群:57.9%III群:36.8%)は各群間に有意差は見られなかったが,分娩率はII群(57.9%)が他の2群よりも有意に(I群:16.7%,P<0.01,III群:26.3%,P<0.05)高かった。多産率はI群で低かった(I群:1.67±0.58,II群:1.91±0.83,III群:2.20±0.84)が有意差は認められなかった。処置後8日目の黄体数および卵胞数についても,各群間(I群:3.30±2.54,0.60±1.07,II群:2.80±1.48,1.40±1.35,III群:2.10±1.20,1.00±1.25)に有意差はなかった。GnRH注射区(II群)において,排卵卵子または胚の死滅率は有意に(P<0.05)低かった(I群:90.9%,II群:64.3%,III群:85.7%)。また,抗PMSG注射により血漿中E2濃度は短時間に低下したが,受胎率への効果は認められなかった。以上の結果から,非繁殖季節においてMAPスポンジとPMSGで発情を誘起した雌羊に150μgGnRHを1回筋肉注射することにより,受胎率の向上が認められた。
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© 日本繁殖生物学会
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