家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
黒毛和種牛の発情同期化におけるprogesterone intravaginal device(PRID)の使用
福井 豊武藤 浩史椿 実小田切 泉増戸 義典小野 斉家倉 博
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1984 年 30 巻 2 号 p. 117-126

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抄録
肉用牛では,交配および分娩時期を集中させる意味から発情同期化は重要な繁殖技術の一つである。本実験はprogesterone releasing intravaginal device (PRID)とprostaglandin F (PGF)の併用処置およびPGF2回注射による発情同期化を行い,処置後の発情誘起率および受胎率を比較検討した。
供試牛は実験開始時において,1~3回の交配(自然交配または人工授精)により不受胎であった黒毛和種雌牛,計25頭である。このうち,8頭にはPRIDを(I群),4頭には10mg estradiol benzoate (E.B.)カプセルを装着したPRIDを(II群)12日間腟内深部に挿入した。この両群において,PRIDの除去前24時間目に25mgPGFを1回筋肉内注射した。また,III群として,6頭の雌牛に対し25mgPGFを11日間隔で2回筋肉内注射した。残りの7頭は無処置群(IV群)とした。処置後5日間,連続的に発情観察し,発情雌牛には凍結•融解精液で1回人工授精した。処置期間中および処置後21日目において,1頭当り7~8回頸動脈から採血し(午前10~12時),血清中progesterone(P)値をRIAにより測定した.受胎の有無は授精後20~21日目のP値(>2.0ng/ml),60~90日目のnon-return(N.R.)および直腸検査により判定し,各群間で比較検討した。
PRID挿入期間中,12頭のうち3頭はPRIDを紛失した(保持率:75.0%)。これら3頭に対しては,紛失発見後直ちに新しいPRIDを挿入したが,処置後の発情は遅れる傾向にあった。PRIDは挿入時の性周期(2~8日目)に関係なく発情抑制効果を示し,処置後の発情誘起率はI群で120時間以内に100%(8/8),II群で72時間以内に75.0%(3/4)であった。III群では,1回目PGF注射後120時間以内に82.5%(5/6)が,2回目PGF注射後は72時間以内に100%(6/6)が発情を示した。授精後60~90日目の直腸検査によるI~IV群の妊娠率はそれぞれ62.5%(5/8),25.0%(1/4),50.0%(3/16)および57.2%(4/7)であった。
以上の結果より,1~3回の交配で受胎しなかった黒毛和種において,PRIDとPGFの併用処置はPGF2回注射に匹敵する発情同期化効果を示し,受胎率もPGF2回注射や無処置群に比べて良好であった。
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© 日本繁殖生物学会
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