家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
マウス初期胚の染色体検索に関する研究
菱沼 貢金川 弘司
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1984 年 30 巻 4 号 p. 220-225

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抄録
2ヵ月齢のddY系マウス25匹および2~4ヵ月齢のddY系とBALB/c系の雑種マウス15匹から得られた後期胚盤胞304個を供試材料として,美甘(1977)の方法に従って染色体標本を作製し,核数,中期核板数および染色体の長さを求めて,培養条件を検討した。
培養液では,20%FCS添加MEM,20%FCS添加PBSに比べBMOC-3を用いた場合に多くの中期核板が得られた。また,コルヒチン濃度の増加に伴って中期核板数は増加する傾向を示し,高濃度群(0.4~1.6μg/ml)では低濃度群(0.025,0.05μg/ml)に比べ中期核板数は有意に増加した(P<0.05)。また,培養時間の延長に伴い中期核板数は増加する傾向を示したが,細胞の変性により核数は減少した。培養6時間以上では染色体の収縮が顕著に認められた。以上の結果から,0.4μg/mlコルヒチンを含むBMOC-3で2時間培養することにより,最も鮮明な染色体標本を作製することができるように思われた。
次にこの条件下で,3週齢のddY系未成熟マウス11匹から得られた後期胚盤胞155個について標本を作製したところ,初期胚1個当たり平均66.0個の核および5.7個の中期核板を得ることができた。また,145個の初期胚から染色体数算出可能な標本が得られ,118個(81.4%)の初期胚が正常な2倍性を示した。しかし,染色体数算出可能な全中期核板529個について染色体数を調べた結果,正常な2倍性を示すものは51.4%(272個)に減少した。また,低2倍性を示すものは29.5%(156個)に増加した。以上の結果から,初期胚の染色体検査を行なう場合には,染色体の流失による低2倍性の増加を考慮すべきであると考えられた。
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© 日本繁殖生物学会
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