抄録
過剰排卵処置を施した未経産牛から発情周期の6日目に回収した桑実胚をガラス刃を用いて切断•2分離した。2分離胚は,一方を自己の透明帯内に残置し,他方を裸化胚とするか(A群)あるいは両方を裸化胚として(B群)体外培養および移植を行い生存性を検討した。体外培養40~46時間後に正常な胚盤胞に発育した2分離胚は,A群では16個(8組)中6,B群で28個(14組)中7個であった。しかし,2分離胚の両方が正常な胚盤胞に発育したものは,A,B群ともにわずか1組ずつであった。移植は非手術的に1頭の受卵牛に1個ずつ行なった。A群では14組28個の2分離胚を移植し,1組の1卵性双仔と2頭の仔牛が得られた。B群では8組16個の胚を移植したが,3頭の仔牛が分娩されたものの,1卵性双仔は得られなかった。本実験の2分離胚の生存性は低かったが,桑実胚を2分離した場合,裸化胚でも正常に発育することから,透明帯は絶対的に不可欠なものではないと考えられた。