家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
液体窒素ガス急速凍結法で凍結したマウス胚の生存性に影響をおよぼすいくつかの要因
宮本 元宮本 庸平石橋 武彦
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 32 巻 1 号 p. 36-41

詳細
抄録
保護物質の種類,ショ糖による凍結前の胚の脱水処理,凍結•融解胚からのグリセリン除去方法などの諸要因が,液体窒素ガスで急速凍結されたマウス桑実胚の生存性におよぼす影響について検討した。
1. グリセリン(78%),プロピレングリコール(70%),エチレングリコール(67%)で比較的高い胚の生存性がえられ,エリスリトール(53%)でもある程度の生存性がえられた。これに対してDMSO(27%)の保護効果は小さく,メタノールとショ糖には保護効果は認められなかった。
2. 凍結前に0°Cで10分間グリセリン平衡した胚の生存率(81%)は,20(41%)および38°C(19%)で平衡したものより高かった。
3.凍結前に室温下で5分間0.5Mショ糖液に胚を浮遊させ脱水処理を行なったが,凍結•融解後の胚の生存率は無処理のものに比べ改善されなかった。
4. -7°Cで植氷した胚と植氷しなかった胚の間には,生存率の差は認められなかった。
5.凍結•融解胚を最初0.5Mショ糖と2Mグリセリンを含むPBSに移し,ついで0.5Mショ糖のみを含むPBSおよび新鮮PBSに順次移して胚からグリセリンを除去したとき,除去温度(0,20および38°C)の間に生存率の有意な差はなかった。
6.室温下で凍結•融解胚からグリセリンを除去する場合,上述のショ糖を用いて除去したときにもっとも高い生存率(74%)がえられた。融解サンプルに0.2,0.2および0.4m1のPBSを1分間隔で添加してグリセリンを除去すると生存率は51%に低下し,融解サンプルをPBSに直接移してグリセリンを急速に除去すると胚はほとんど生存できなかった(8%)。
7.液体窒素ガスで急速凍結した胚の生存率(76%)は,緩慢凍結した胚(89%)に比べ若干低い傾向がみられたが,有意な差ではなかった。
著者関連情報
© 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top