家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
改良したウシ凍結受精卵の1段階ストロー法による野外での非手術的移植
鈴木 達行下平 乙夫酒井 豊松田 修一三浦 秀夫伊藤 一伸
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1986 年 32 巻 3 号 p. 118-123

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抄録

23頭の過剰排卵処置をした黒毛和種から回収した受精卵を1段階でグリセロール平衡したのち,受精卵を含むグリセロール液とウシ血清アルブミン加蔗糖液からなる1段階ストローを作製した。各液層を作製する際に滅菌した濾紙でストロー内面に付着した液を吸い取り,各液が混合しないように工夫し,植氷の際の低温操作が受精卵に影響を及ぼさないようにストローの植氷部分と受精卵の入った冷却部分とを断熱材を介して2つの部屋に分断したプログラミングフリーザーで凍結し,2~7ヵ月間保存した。この受精卵を融解後,直接またはストローから取り出し(間接),生存性を確認した後,いずれも未経産の,日本短角一代交雑種牛13頭,褐毛和種一代交雑種牛12頭,および対照として黒毛和種牛15頭に非手術的に移植した。
移植は1985年9月下旬から1986年1月下旬の間に1~3回実施した。
凍結卵の直接と間接移植による受胎率は,交雑種でそれぞれ18回中11例(61.1%)と25回中11例(44%),黒毛和種でそれぞれ6回中3例(50%)と13回中3例(23.1%)となり,いずれも直接移植で高い受胎率が得られた。延回数別の受胎率は,交雑種43回中22例(51.2%),黒毛和種19回中6例(31.6%)となり,交雑種で良好であった。移植技術の熟練者と未熟練者による受胎率を比較すると,交雑種でそれぞれ37回中21例(56.8%)と6回中1例(16.7%),黒毛和種でそれぞれ15回中5例(33.3%)と4回中1例(25%)となり,いずれも熟練者の方が良好であった。

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