家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
牛の胚ならびに卵胞内卵子の非凍結低温下での短期保存について
青柳 敬人岩住 安晃和地 秀一古館 誠藤井 勝巳福井 豊小野 斉
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1986 年 32 巻 3 号 p. 138-143

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抄録

小形化桑実胚~初期胚盤胞の牛胚ならびに直径2~5mmの卵胞から吸引した卵子を4°Cで保存し,体外培養による胚の発育率ならびに卵子の成熟率に対する限界保存時間を知る目的で今回の実験を行った。
15ml 容積の滅菌チューブを使用し,修正PBSに20%の牛胎児血清(FCS)を加えた液,1.5ml を胚またくは卵子とともに入れ,チューブにキャップをして,200ml の蒸留水の入った三角フラスコ内に収容し,冷蔵庫内(約4°C)で保存を行った。胚については0~96時間,卵子については0~48時間各々保存した。体外培養は胚の場合,Ham'sF10+20%FCSで48~72時間,微小滴培養法で行い,卵子はHam'sF12+20%FCSに1mlあたりLH10μg,FSH1μg,E、を5μg添加し,試験管法で24~27時間,38°C,CO2 5% と空気95% のインキュベーター内で培養した。
牛胚の保存•培養後の拡張胚盤胞への発育率は0時間:84.0%,24時間:83.3%,36時間:41.7%,48時間:41.7%,72時間:30.0%および96時間:0%であった。
また,卵胞内卵子の培養後の第2成熟分裂中期への成熟率は0時間:62.1%,2時間:59.5%および6時間:34.2%で以降極端に成熟率の低下を認め,48時間保存では6.7%であった。
以上の結果より,コントロール(0時間)の体外培養による発育率または成熟率とほぼ同等の成績の得られる4°C保存限界時間は牛胚の場合24~36時間の間,未成熟卵子は2~6時間の間にあると考えられ,さらに卵胞内卵子の低温抵抗性は胚に比べ,極端に低いことが示唆された。

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