抄録
豚胚の性別判定に利用し得る,胚の顕微手術法の開発を行った。豚拡張期胚盤胞22個をガラス微細針を用いて切断し,内部細胞塊を含む部分(ICM half)と,内部細胞塊を含まない栄養芽層のみの部分(Tr half)とに2分した。2つの部分を20時間培養後,ICM halfは胚受容雌に移植し, Tr halfは染色体解析に用いた。ICM halfの移植後の発達率は63.2%(12/19)で,一般に豚胚の移植において得られている胚の発達率と同等であった。また,Tr halfの染色体解析では,標本20例中16例(80%)において中期核板像が認められた。一標本当たりの細胞数は平均65.8個であった。以上の結果から,本論文に示した顕徴手術法により,胚の生存性を低下させずに,染色体解析の標本作製のために必要とされる十分な数の細胞を採取できることが示された。