抄録
メラトニンをシリコンカプセルに封入して非繁殖期めん羊の腋下部皮下に埋み込み,繁殖活動に与える影響を検討した。
カプセルからの持続的放出により,血漿メラトニン濃度は用量反応的に上昇し,カプセル2個を持つ動物では,暗期のピーク値に匹敵する高値が一日を通じて維持された。
5月8日(DayO)に,非哺乳中の雌ヒツジ23頭を無作為に3群に分け,メラトニンカプセルを1個(MEL1群,7頭)または2個(MEL2群,6頭)埋め込み,あるいは対照群(10頭)として,自然日長条件下で飼養した。
MEL2群では,血漿プロゲステロン濃度が上昇し,処置開始約2カ月後には対照群との間で有意差が生じ,卵巣機能に対するメラトニンの促進的効果が示された。一方,MEL1群では,明瞭な効果が認められず,血中メラトニン濃度の上昇が不十分であったためと推察された。
本実験の成績より,松果体ホルモンであるメラトニンの外生的投与によって,短日処理と同様,非繁殖期にめん羊の卵巣活動を誘起しうることが示された。