家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
ウシ卵胞のゴナドトロピンレセプター濃度とステロイドホルモン濃度について
川手 憲俊稲葉 俊夫森 純一
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 35 巻 2 号 p. 106-112

詳細
抄録
ウシの発育卵胞および嚢腫卵胞における頼粒層細胞のFSH,LHレセプターおよび卵胞膜内膜のLHレセプター濃度,ならびに卵胞液中ステロイドホルモン濃度について検討し,以下の結果を得た。1.顆粒層細胞のFSHレセプター濃度は小卵胞(3.0-7.0mm)から中卵胞(8.0-11.0mm)にかけて増加し,大卵胞(12.0-19.0mm)になると減少する傾向を示した。嚢腫卵胞( ?? 23.0mm)の同レセプター濃度は大卵胞のそれと比較して有意な差は認められなかった。2.顆粒層細胞のLHレセプター濃度は小および中卵胞から大卵胞へ有意に増加した(P<0.05)。嚢腫卵胞の同レセプター濃度は大卵胞のそれと比較して有意に低値を示した(P<0.05)。卵胞膜内膜のLHレセプター濃度も小および中卵胞から大卵胞へかけて,有意ではないものの増加した。嚢腫卵胞の同レセプター濃度は大卵胞のみならず,中および小卵胞に比較しても有意に低値を示した(P<0.05)。3.卵胞液中テストステロン濃度は小および中卵胞から大卵胞へ有意に減少するが(P<0.05),エストラジオールー17β濃度は有意に増加した(P<0.05)。嚢腫卵胞の卵胞液申テストステロン濃度は大卵胞に比較して低い傾向を示し,エストラジオールー17β濃度は大卵胞に比較して有意な低値を示した(P<0.05)。一方,嚢腫卵胞のプロジェステロン濃度は大卵胞に比較して有意な高値を示した(P<0.05)。以上の結果から,ウシの胞状卵胞の発育過程において,初期にはFSHレセプターが増加するが,後期にはLHレセプターが急速に増加し,それとともに芳香化酵素活性の上昇が起こることが示唆された。さらに,嚢腫卵胞ではLHレセプターの減少とテストステロンおよびエストラジオールー17β合成の抑制が生じていることが示唆された。
著者関連情報
© 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top