家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
牛卵母細胞の成熟培地へのゴナドトロピンとエストラジオールの添加が体外受精およびその後の胚発生能に及ぼす影響
福島 護之塩谷 康生桑山 正成岩崎 説雄花田 章
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1991 年 37 巻 2 号 p. 127-132

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抄録

牛卵母細胞の体外成熟培地へのFSH, LHやE2の添加が体外受精後の胚発生能に及ぼす影響を検討した.
牛卵母細胞の成熟用基礎培地には,10%FCS添加ヘペス緩衝M-199を用い,ホルモンを加えないA区,LH(10μ9/ml)とE2(1μ9/ml)を含むB区, B区にFSH(2または10μ9/ml)を添加したCおよびD区の4区を設定し,22時間成熟培養した.種雄牛1頭からの凍結精液を既報のとおり処理後卵子に媒精し,6時間後に発生培地(10%非働化去勢牛血清および0.5mMピルビン酸ナトリウム添加ヘペス緩衝M-199)に移し換えた.媒精10~20時間後の抜き取り検査による受精率は88.2~90.9%で各区間に有意差は認められなかった.媒精50時間後に4細胞期以上に分割した胚の割合は,A区37.4%(122/326),B区31.4%(103/328), C区29.7%(102/343), D区35.6%(122/343)で,A-C区間のみで有意差が認められた.これらの胚を偽妊娠家兎卵管内へ移植して115時間後に回収し,回収胚を発生培地でさらに24時間体外培養したところ,A区で39.6%, B区で49.3%, C区で36.0%,D区で34,7%の胚がそれぞれ胚盤胞へ発生しており,各区間で有意差は認められなかった.また,胚盤胞期胚の一部を8頭の受卵牛に移植したところ,ホルモン無添加のA区でも出産例が得られた.
以上の結果から,4細胞期以上に分割した胚を偽妊娠家兎卵管内へ移植する本実験系において,卵母細胞の体外成熟培地へのゴナドトロピン,E2の添加は,体外受精後の発生能に対して特に効果を持たないことが判明した.

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