抄録
【目的】卵巣に存在する胞状卵胞数には大きな個体差が存在する。本研究では、品種・月齢を固定した卵巣の組織標本を作製し、個体の卵胞数と卵巣中の発育途中の卵胞数と相関があるかどうかを明らかにする目的で行った。【方法】食肉センターでウシの卵巣を採取し、個体識別番号から黒毛和種およびホルスタイン種の卵巣を採取した。月齢は若年(39ヶ月齢未満)、中年(40-99ヶ月齢)、老年(100ヶ月齢以上)の3区分に分けた。さらに品種・月齢区分ごとにそれぞれの卵巣を分け、その卵巣の外見(3-5mmの胞状卵胞数、重量)と組織標本から得られたデータ(二次、一次、早期一次、原始卵胞の表面積あたりの予測数)を比較検討した。【結果】卵巣は加齢に伴って重量が増加し、胞状卵胞数と重量との間に正の相関があった。月齢と相関があった要因は、黒毛和種では原始卵胞数、早期一次卵胞との間に負の相関が、二次卵胞数との間に正の相関があった。ホルスタイン種では原始卵胞数、早期一次卵胞との間に負の相関があった。胞状卵胞数と相関があった要因は、黒毛和種の若年区(平均29.8ヶ月齢:n=52)では二次卵胞数との間に、中年区(平均74.3ヶ月齢:n=41)では原始卵胞数、早期一次卵胞数との間に正の相関があったが、老年区(平均143.5ヶ月齢:n=41)ではいずれのステージの卵胞とも相関がなかった。ホルスタイン種の若年区(平均29.1ヶ月齢:n=36)では一次卵胞数との間に、中年区(平均66.7ヶ月齢:n=42)では原始卵胞数、早期一次卵胞数との間に正の相関があったが、老年区(平均123.3ヶ月齢:n=42)ではいずれのステージの卵胞とも相関はなかった。以上のことより中年では原始卵胞の多い個体に卵巣表面の胞状卵胞数が多いことが推測された。