抄録
【目的】プロラクチン(PRL)の特徴として,糖付加,リン酸化,二量体,プロテアーゼによる分解など多数の異型体の存在が挙げられ、特にリン酸化PRLは通常のPRLとは異なった生理作用を持つことが示唆されている。
本研究では下垂体内及び血清内リン酸化PRL (PPRL)含量について,日齢,雌雄,発情周期,エストラジオール(E2)投与,ドーパミン拮抗薬であるメトクロプラマイド(MET)投与における相違を二次元電気泳動とWestern blottingにより検討することを目的とした。また,マウス下垂体前葉PRL分泌細胞は,分泌顆粒の大きさ,形態により1型,2型,3型の3種類に分類でき,E2投与とともに3型が増加する。これはPPRLSの産生動態と一致する。PRL産生細胞に受容体が存在し,PRL産生細胞増殖に影響が無く,PRL合成促進効果があるホルモンであるオキシトシンをマウスに投与することでPPRLが増加するかを検討した。オキシトシンを投与することでPPRL量比が増加すると,細胞増殖とは関係無くPRL産生細胞の形態変化に影響を及ぼす因子がPPRLである可能性が示唆される。
【結果】下垂体ではメスにおいてPPRLSの割合が高く,オスにおいてPPRLTの割合が高いことが示された。また,E2を投与した場合のみPPRLS濃度比が増加した。
次に血清内PPRLの有無を確認した結果,オスの血清内ではPPRLが観察されなかったのに対し,メス血清内にはPPRLS,PPRLTを確認した。またE2を投与したところ血清内にPPRLS濃度比の増加を確認した。以上から,E2投与により下垂体内PRLのセリンリン酸化は促進され,さらに血中へのPPRL分泌も促進されることが示唆された。オキシトシンに関する詳細は調査中である。