日本繁殖生物学会 講演要旨集
第100回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-105
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生殖工学
過剰排卵と胚移植技術を適用した両親が体細胞クローン牛である後代牛の生産
*遠藤 健治東 徹高久 芳恵土屋 秀樹濱野 晴三渡辺 伸也
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抄録
【目的】優秀な遺伝的能力を有する体細胞クローン雌牛を遺伝資源として活用するため,胚移植技術を応用した後代牛生産システムを検証しておく必要がある。本研究では,体細胞クローン雌牛と体細胞クローン雄牛由来精液を用い,このシステムを例証した。【方法】体細胞クローン雌牛(黒毛和種)に過剰排卵処理を行った後,体細胞クローン雄牛(黒毛和種)由来凍結精液を人工授精し,後期桑実胚を採取した。得られたAランク胚を凍結保存したのち,交雑種雌牛に移植した。生産した牛のうち,雄には去勢後の肥育試験,雌牛には繁殖性の調査をそれぞれ実施した。【成績】2回の採卵によって,合計4個の胚をクローン雌牛より得た。そのうち,4個(100%)がAランク胚であった。これら4個の胚を凍結保存後に移植した結果,全てが受胎し,雌雄各2頭を分娩した。この際,流死産や生後直死の発生は全く認められなかった。生産された4頭の後代牛について,体細胞のドナーとなった種雄牛および雌牛との親子鑑定を家畜改良事業団に依頼した結果,これらの動物の間の親子関係に矛盾は認められなかった。2頭の肥育去勢牛をそれぞれ32および33カ月齢にと殺し,枝肉格付けを受けた結果,両者ともA5,BMS No.9であった。雌牛について,1頭は31ヶ月齢までに胚移植6回と人工授精2回行ったが発情が回帰した。もう1頭は22ヶ月齢までに胚移植2回,人工授精2回行って妊娠(3ケ月)した。なお,これら後代牛では,両親が体細胞クローン牛であったにもかかわらず,同居の一般牛と異なる兆候は飼育期間を通じて一切認められなかった。以上の結果より,体細胞クローン雌牛に過剰排卵と胚移植技術を適用することで,効率的な後代牛生産が可能であることが例証された。
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© 2007 日本繁殖生物学会
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