抄録
【目的】
Aurora-AはGV卵内に蓄積されている母性mRNAのCPE配列に結合するCPEBをリン酸化し、ポリA伸長を介して翻訳を制御するキナーゼとしてXenopusで報告された。我々は以前ブタAurora-Aをクローニングし、ブタ卵成熟過程において野生型、及び恒常活性型Aurora-Aを発現させた結果、ブタAurora-Aは卵内で活性化制御を受けた後に機能し、CPE配列を持つmRNAの翻訳を促進するという示唆が得られたことを報告した。(第106回、第108回日本畜産学会)そこで、本研究ではブタ卵成熟におけるAurora-Aの機能阻害による影響を確認し、その機能について知見を深めることを目的とした。
【方法】
ブタAurora-A配列から作製したアンチセンスRNAを屠場由来の卵巣より採取したブタ未成熟卵の細胞質中へ顕微注入し、dbcAMP添加培地でGV期を維持したまま48時間培養して、卵内のAurora-Aをほぼ枯渇させた。その後通常の成熟用培地で培養し、CPE配列を持つ減数分裂関連因子群の免疫ブロット、MPFの活性測定及び、核相の観察によりその影響を経時的に解析した。また、ブタCPEBをクローニングし、Xenopusでの知見を参考に、Aurora-Aによってリン酸化されない変異型を作製し卵内に発現させ、その影響も合わせて解析した。
【結果】
Aurora-Aをほぼ枯渇させた状態で体外成熟培養を行ったところ、卵成熟進行への影響はほとんど見られなかった。また、変異型CPEBを卵内に発現させ体外成熟培養を行った結果も、わずかなCyclinB1/B2の発現の遅延が見られたものの、有意な差は見られなかった。そこで、両条件の下観察を行ったところ、卵成熟進行の有意な遅延が見られた。以上の結果から、ブタ卵成熟過程においてCPE配列を持つmRNAのCPEBリン酸化による翻訳制御は正常な卵成熟進行に重要であり、Aurora-Aはこの過程において機能を担っていることが示唆された。