日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-38
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生殖工学
ラットフリーズドライ精子の長期保存後の受精能とICSI胚の培養条件の検討
*金子 武人木村 信哉中潟 直己
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抄録
【目的】4℃での簡易保存が可能であるフリーズドライ精子は新規精子保存法として注目され、多くの動物種で試みられている。近年、ラットにおいても産子作出の成功例が報告されているが、フリーズドライ精子と受精した胚の発生は低いのが現状である。そこで本研究では、ラットICSI胚の発生能向上を目的として初期の胚培養条件について検討し、さらに4℃で長期保存したフリーズドライ精子の受精能について検討を行った。 【方法】10週齢以上のWistarラットの精巣上体尾部から精子を採取し、10mM Tris-HCl+1mM EDTA(TE buffer)中に懸濁した。Kanekoら(2007)の方法に従ってフリーズドライした精子は、4℃で一定期間保存した。新鮮精子およびフリーズドライ精子をICSI後、雌雄両前核を確認した卵子はmKRBで15時間の前培養を行った後、mR1ECM中で胚盤胞まで培養した。また、4℃で6ヶ月および1年間長期保存したフリーズドライ精子と受精した卵子を同様の条件下で培養した後、2細胞期へ発生した胚を移植し産子への発生について検討した。 【結果および考察】新鮮精子をICSI後、mKRBで前培養した卵子において2細胞期へ発生した胚の50%が胚盤胞へ発生し、mKRBでの前培養を行わない対照区(28%)と比較して有意に高い値を示した。フリーズドライ精子から作製した胚においても、前培養区で32%、対照区で15%と前培養区で有意に高い値を示した。さらに、4℃で6ヶ月および1年間長期保存したフリーズドライ精子から作製した胚の産子への発生率はそれぞれ17%および16%であり、長期保存による精子の受精能の低下は認められなかった。以上のことから、ラットICSI胚は初期の培養条件がその後の発生に重要であることが示された。また、本研究で用いたフリーズドライ法によりラット精子は4℃で1年間の長期保存が可能であることが示された。
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© 2008 日本繁殖生物学会
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