日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-83
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生殖工学
個体にダメージを与えないで採取した微量なサンプルからのクローン個体の作出
*若山 清香若山 照彦
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抄録

【目的】クローン個体の作出あるいはクローン胚由来ES(ntES)細胞の樹立のためには生体からドナー細胞を採取しなればならない。マウスでは繊維芽細胞や卵丘細胞が主に用いられているが、そのために尻尾の切断などでドナー個体へ大きなダメージを与えてしまう。そこで本研究では、ドナー個体のダメージを最小限にできる細胞として簡単かつ大量に採取できる血球を選び、クローン個体およびntES細胞の作出を試みた。【方法】マウスはBDF1の雌雄をそれぞれ2匹ずつ用い、眼静脈あるいは尾静脈から血液を2μl採取した。血球は赤血球を溶解させた後、H-CZB培地で遠心洗浄して取り出しPVP培地に移した。核移植は定法に従って行った。本研究では、はじめに核移植胚盤胞からntES細胞を樹立し、次にこのntES細胞をドナーとして2回目の核移植でクローン個体の作出を試みた。また4倍体胚とのキメラによりntES細胞由来の産仔の作出も同時に試みた。【結果】2μlの血液中には核移植を行うため十分な量の細胞が含まれており、1μlでも可能だと思われた。核移植後の前核形成率は平均56%と低かったが、前核を形成した胚は29‐63%が胚盤胞へ発生した。ntES細胞は使用した4匹すべてから1~4ライン(9-57%/胚盤胞)樹立でき、雌雄差は見られなかった。現在これらのntES細胞を用いてクローン個体および4倍体キメラの作出を試みており、すでに1匹のドナーからはクローン個体と4倍体キメラを作ることに成功している(クローン:1.7%、4倍体キメラ:18%)。以上の結果より、ドナー個体へダメージを与えずに採取できるわずか2μlの血液からでも、比較的高率にクローン個体やntES細胞を作り出せることを証明した。今後、低い前核形成率の改善、使用した血球細胞の種類の同定などを行うことにより、本方法は核移植研究を促進する新しい手法になると思われる。

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© 2008 日本繁殖生物学会
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