日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-84
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生殖工学
siRNA発現ベクターDNAを導入したクラウン系ミニブタ体細胞からのクローン胚作出と標的遺伝子発現抑制
*池 海英篠原 真理子横峯 孝昭佐藤 正宏高尾 尊身三好 和睦吉田 光敏
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抄録

【目的】鹿児島大学で開発されたクラウン系ミニブタは医工学用に有望な系統であると考えられ,簡便・効率的な遺伝子改変による高付加価値化が期待されている。本研究では遺伝子発現制御ベクターの設計・構築が比較的容易である短鎖干渉RNA(short interfering RNA; siRNA)を発現するベクターDNAを導入したミニブタ体細胞からのクローン胚作出と得られる胚盤胞における標的遺伝子の発現状況を調べた。【方法】α-1,3-galactosyltransferase(α-GalT)遺伝子に対応するsiRNA発現ベクターDNA配列にEGFP遺伝子を組み込み,アマクサシステムにてクラウン系ミニブタ胎児細胞へ遺伝子導入した。食肉センター由来のブタ卵子を体外培養して得た成熟卵子を除核後,ドナー細胞と電気融合することでクローン胚を作出した。クローン胚は超音波を照射し活性化を誘起後,発生培地に移して培養し,体外発生状況を対照区と比較検討した。さらに,得られた胚盤胞におけるα-GalT遺伝子発現状況を逆転写-PCR法で調べた。【結果】ドナー細胞への遺伝子導入の有無で融合率および卵割率には差は見られなかった。しかし,胚盤胞形成率および胚盤胞細胞数は遺伝子導入区で対照区に比べ有意に低い値を示した(P<0.05)。一方,遺伝子導入区で得られたすべての胚盤胞にはEGFPの蛍光が認められた。α-GalT遺伝子発現率は対照区が57.1%であったのに比べ,遺伝子導入区で発現が全く検出できず有意に減少した(P<0.05)。一方,β-actin遺伝子発現は遺伝子導入の有無に係わらずすべてのクローン胚盤胞で観察された。以上の結果から,ミニブタ体細胞クローン技術とRNAi技術を組み合わせることで,α-GalT遺伝子発現制御が可能だと考えられた。

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© 2008 日本繁殖生物学会
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