日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-10
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卵巣
ウシ黄体内における発情周期中、黄体退行中及び初期妊娠期でのPGFレセプター発現動態
*赤刎 幸人白砂 孔明永井 香也Nicola BeindorffHeinrich Bollwein佐々木 基樹清水 隆宮本 明夫
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抄録
【目的】ウシ黄体退行現象は子宮からのPGF(PG)の刺激により開始され、その後黄体内からもPGが産生されることで持続的に引き起こされていく。PGの作用発現にはレセプターであるFPrとの結合が必要不可欠である。現在、黄体内においてFPr mRNA発現は排卵後急激に増加し、PG投与後や黄体退行期で減少を示すことが知られているが、FPrタンパク発現や局在の詳細は明らかではない。そこで本研究では発情周期中、さらに黄体退行過程及び初期妊娠期でのウシFPr発現の動態について明らかにすることを目的とした。
【方法】発情周期:食肉処理場由来ウシ黄体を黄体期初期(Day3-5)、中期(Day8-10)、後期(Day13-15)、退行期(Day18以降)に区分し黄体組織を採取した(n=3-5/区)。黄体退行過程:黄体期中期(Day10-12)にPG投与後0分、5分、15分、30分、2時間、12時間で黄体組織を採取した(n=4-5/区:排卵=day1)。初期妊娠期:黄体期中期 (ED12)、後期(ED16)及び初期妊娠期 (PD16, PD40)から黄体組織を採取した(n=5/区:排卵=day1)。回収した組織についてreal-time PCR法及びウェスタンブロッティング法を用い、FPrのmRNA発現、タンパク発現及びその変動について解析を行った。
【結果】発情周期中でのFPr mRNA発現は黄体期初期から中期にかけて増加し、退行期で減少した。しかしFPr タンパク発現は発情周期を通して有意な変化はみられなかった。同様に黄体退行過程ではPG投与5分後以降でFPr mRNA発現が減少したのに対し、FPr タンパク発現は12時間後に至るまで同じレベルを維持し有意な変化はみられなかった。初期妊娠期では、ED12に対しFPr mRNA発現はPD40で増加を示したが、FPrタンパク発現はPD16以降で減少した。以上の一連の結果から、FPrはmRNAとタンパク発現間の変動の相関性は小さく、黄体退行過程中においてFPr mRNA発現は減少するがタンパク発現は維持され、PGのFPrを介した作用が持続している可能性、さらに初期妊娠期ではFPrタンパク発現を減少させることでPGへの反応性を減少させている可能性が示唆された。
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© 2009 日本繁殖生物学会
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