日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-19
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性周期・妊娠
ウシ胎盤停滞におけるアポトーシス関連因子の発現
*若宮 香理亀森 泰之大谷 新太郎大河原 弘美Acosta Tomas J.奥田 潔
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抄録

【目的】胎盤停滞は母体胎盤から胎子胎盤の剥離が阻害されることにより起こり、多様な要因の関与する可能性が検討されてきた。胎盤が剥離しない原因として、分娩前の胎盤において胎盤排出を含む分娩準備が不十分であることや炎症の存在などが考えられている。このため分娩後の胎子胎盤と母体胎盤の結合度が弱まることなく胎盤停滞を発生すると推測されているが、詳細は明らかにされていない。また我々は以前、分娩時の胎盤において caspase-3 mRNA 発現が正常牛と比べて胎盤停滞牛の母体胎盤において有意に低いことを示した。本研究ではウシ胎盤停滞の発生機序を明らかにする目的で、正常牛および胎盤停滞牛の胎盤節組織におけるアポトーシス関連因子である bax、bcl-2、Fas、cFLIP、caspase-8、cleaved caspase-3 発現を比較しアポトーシス誘導経路を検討した。
【方法】分娩直後にウシ胎子が存在した側の子宮角から胎盤節組織を採取し、胎子側と母体側に二分した。分娩後12 時間の胎膜排出状況から、正常牛と胎盤停滞牛に分類した。これらの胎盤節組織におけるbax、bcl-2、Fas、cFLIP、caspase-8 mRNA 発現およびタンパク発現、cleaved caspase-3タンパク発現をそれぞれ測定し、正常牛と胎盤停滞牛を比較した。なおmRNA発現は半定量的RT-PCR法で、タンパク発現はWestern blot法により測定した。
【結果】胎盤節組織のFas mRNA 発現は正常牛の母体側に比べて胎盤停滞牛の母体側において有意に低く (P<0.05)、アポトーシス抑制因子であるcFLIP mRNA 発現は母体、胎子胎盤ともに正常牛と比べて胎盤停滞牛において有意に高かった(P<0.05)。その他のmRNAおよびタンパク発現に関しては有意な差は認められなかった。遺伝子からタンパクの発現までには転写から翻訳までの時間的な差があることが知られており、本研究では分娩直後のウシ胎盤を用いたため、タンパク発現に差が認められなかったのかもしれない。以上のことから胎盤排出には Fas を介したアポトーシスが関与していることが示唆された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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