日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-20
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性周期・妊娠
ラット17番染色体上の遺伝子群による系統特異的な胎盤形成の制御
*金野 俊洋クロウリー アマンダレンペル リアルミ モハマッド今川 和彦ソアレス マイケル
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抄録

胎盤は、胎生に必要なシグナルと栄養の供給を行う胚外組織である。ラットは、胚盤胞細胞の子宮内への浸潤、血管の著しい再構築により特徴づけられる血絨毛性胎盤を形成するが、その形成様式には系統間の違いが明確に見られる。Holtzman-Sprague Dawley、Fischer 344およびDahl SS (DSS)はよく発達したjunctional zoneや胚盤胞細胞の広範な浸潤を伴う胎盤を形成するが、Brown Norway (BN) ラットの胎盤形成はより限定的である。胎盤形成の系統特異性は、その構造的特徴あるいは遺伝子の発現特性により定量化する事ができる。本研究では、これら定量的な特質を用いて染色体置換近交系ラットを解析し、胎盤形成の制御における遺伝的機構の解明を試みた。染色体置換ラット系統は、BN由来の染色体をDSSに移入することにより作出されており、我々はこれら21の染色体置換系統(20の常染色体とX染色体)と、親系統DSSおよびBNについて解析した。雌ラットは同系統の雄と交配後、妊娠18日にその胎盤形成部位が組織的および生 化学的解析に供された。染色体置換ラット系統間において、産子数、胎盤および胎児重量の違いは見られなかった。親系統の遺伝子発現プロファイリングの結果、junctional zone (JZ)におけるPLP-Lの発現が系統特異的である事が示された。そこで、染色体置換系統間のJZにおけるPLP-L発現プロファイリングを検証した。その結果、BN由来の17番染色体がDSSに移入されたDSS-BN17におけるPLP-Lの発現量は、DSSと異なりBNにより近い事が明らかとなった。さらに、DSS-BN17におけるPLP-L mRNAの発現局在はBNに見られるそれと同様であった。これらの結果から、我々は胎盤形成における制御情報として17番染色体を同定したが、今後はDSS-BN17からの遺伝子置換系統の作出、さらには胎盤形成を制御する遺伝子座の同定が期待される。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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