日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-21
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性周期・妊娠
妊娠初期ウシ末梢血白血球画分における遺伝子発現の解析
*七條 あゆみ細江 実佐牛澤 浩一高橋 透古澤 軌徳永 智之木崎 景一郎橋爪 一善
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抄録

【目的】近年、遺伝子発現検出技術の向上により妊娠初期のウシ末梢血白血球(PBL)における特異分子の検出が可能となってきている。その遺伝子発現を指標に妊娠状態に関連する分子を特定する試みがなされているが、未だ不明の部分が多く特異分子の特定には至っていない。生体内での各白血球画分の機能は様々であり、遺伝子発現レベルでも異なる特徴を有していると考えられる。本研究では、ウシPBLにおいて妊娠に関連する遺伝子発現の主体を担っている画分を突き止めるため、各白血球画分における遺伝子発現動態を検証した。【方法】黒毛和種牛を用い、人工授精日を妊娠0日(D0)としてD0、7、14、21に頚静脈より採血した。比重遠心により分離したバフィーコート部分より白血球を採取、溶血処理したものを解析試料とした。セルソーターを用い、死細胞を除くすべての細胞(all)、顆粒球(G)、単球(M)、リンパ球(L)を分取し、RNAを抽出した。ISG15、Mx1、Mx2、OAS-1についてリアルタイムRT-PCRを行い、各画分における遺伝子発現量の変化を調べた。また血漿プロジェステロン濃度を時間分解蛍光法により確認した。対象として、発情周期を通じて同様に採血したものを解析した。【結果】ウシの白血球は、フローサイトメトリーにおけるスキャッター解析により、G、M、L画分の分取が可能であった。画分中の4遺伝子すべてについて、発情周期を通して発現量の有意な変化が見られなかったが、妊娠初期にはD0と比較して有意な増加が認められた。また、all、M、LにおいてはD21以降に初めて有意差が認められ、GではD14から有意な変化を認めた。Gでの遺伝子発現はD7以降において他の3画分と比較して高かった。これらのことから、妊娠初期のウシPBLにおいて発現が増加すると報告されている遺伝子の発現の主体を担っているのは顆粒球であると考えられる。それ故、妊娠初期ウシ末梢血中の顆粒球における遺伝子発現の変動は妊娠に関連して発現する特異分子の状態を反映すると推察された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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