日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-26
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生殖工学
低温処理したドジョウ非除核未受精卵への体細胞核移植
*田中 大介太田 博巳上野 紘一
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抄録

【目的】これまでの研究でドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)を実験材料とした胞胚細胞の核移植を行ない、得られた個体が外部形態的に通常受精個体と差異が無く、生殖能力を有していることを明らかにした。次に培養体細胞の核移植による個体作出を行うため、通常培養、並びに血清飢餓培養を行った体細胞の核移植を行なったが、体節期以降の個体は得られなかった。本研究では、更なる発生段階の個体作出を目的として、メダガで良好な結果が得られている低温処理卵への培養体細胞の核移植を試みた。【方法】ドジョウ成魚の尾鰭から採取した体細胞を培養し、ドナーとした。培養にはFBSを10%添加し、カナマイシンを50mg/l の濃度で加えたD-MEMを用いた。コンフルエントまで培養し、トリプシンで解離したものをドナー細胞とした。レシピエントは、ドジョウの未受精卵を大型シャーレの曝気水中に撒き、5分間の接水後0℃の水槽にて40分間低温処理を行なった。その後トリプシンにより卵膜除去し、除核せずにレシピエント卵とした。これらを用いて核移植を行ない、卵の生残率、得られた胚や仔魚の倍数性、ゲノムの由来の分析を行なった。【結果】核移植を行った837卵のうち、201 (24.0%) が卵割し、97 (11.6%) が胞胚期、43 (5.1%) が囊胚期、6 (0.7%) が体節期、3 (0.4%) が孵化期に達し、1個体が5日齢仔魚まで生存した。倍数性の判別を体節期2個体と、5日齢1個体について行なったところ、2個体が4倍体、1個体が2倍体であった。マイクロサテライト多型分析を用いて囊胚期、体節期の胚および仔魚のゲノムの由来を調べた結果、13個体がドナーとレシピエントの両方に由来し、4個体がドナーのみに由来、1個体がレシピエントのみに由来していた。倍数性とゲノムの由来の両方が判別できた個体のうち、2倍体1個体はドナーのみのゲノムに由来し、4倍体2個体はいずれもドナーとレシピエント両方のゲノムに由来していた。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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