日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-27
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生殖工学
マウス体細胞核移植由来卵子におけるクロマチンリモデリング複合体、SWR1複合体の構成因子の発現
*西山 有依森田 真裕安齋 政幸加藤 博巳細井 美彦原田 昌彦三谷 匡入谷 明
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抄録

【目的】体細胞核移植(SCNT)において、体細胞核のリプログラミングに係わるエピジェネティクス制御の分子基盤についてはいまだ十分に解明されていない。近年、細胞核を構成するタンパク質が細胞核やクロマチンの機能構造を動的に制御し、遺伝子発現制御の構造基盤を形成する可能性が示されている。その中でも、アクチン関連タンパク質(actin-related protein : Arp)は、クロマチンの機能構造やダイナミクスに関与するクロマチンリモデリング複合体に広く含まれている。そこで本研究では、受精卵および体細胞核移植由来卵子(SCNT卵子)において、クロマチンリモデリング複合体の1つであるSWR1複合体に着目し、その構成因子であるArp6、Arp4およびSWR1の局在について免疫組織化学的解析を行った。【方法】体細胞核移植はWakayamaらの方法に従い行った。レシピエント卵子はB6D2F1マウスより、ドナー細胞に用いた卵丘細胞はB6C3F1マウスより回収した。体外受精はToyodaらの方法に従い、B6C3F1マウスを用いて行った。卵子の免疫組織化学染色は、受精卵は媒精後、SCNT卵子は細胞注入後、5、7、9時間にて行った。本実験は近畿大学動物実験規定に準じて行った。【結果・考察】Arp6は、受精卵、SCNT卵子ともに核全体でドット状の局在が見られ、特に受精卵の雄性前核に強い局在がみられた。Arp4は、受精卵とSCNT卵子いずれも核全体に分布し、特に核小体辺縁部でやや多く局在する傾向がみられた。SWR1は、特に受精卵の雄性前核の核小体辺縁部で強く均一な分布がみられたが、SCNT卵子では核小体辺縁部での局在が少なく不均一であった。またDAPIによる染色から、受精卵に比べSCNT卵子では核小体辺縁部でのヘテロクロマチン構造が不均一であることが示された。これらの結果から、細胞核の機能構造やクロマチンリモデリング複合体の形成異常が、SCNT卵子での核のリプログラミングに影響している可能性が示唆された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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