日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-30
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生殖工学
胎子及び幼若マウスにおける生殖腺特異的発現遺伝子GSEの発現解析
*畑中 勇輝佐藤 学野老 美紀子申 承旭西川 慧李 香欣天野 朋子三谷 匡加藤 博己岸上 哲士細井 美彦佐伯 和弘入谷 明松本 和也
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抄録

【目的】生殖細胞は遺伝情報を次世代へ伝えることができる唯一の細胞であり、潜在的に全能性を有することが知られていることから、体細胞とは異なる生殖細胞特異的なエピジェネティック制御やシグナル伝達が存在している。近年、これらの事象の重要な因子として生殖細胞特異的に発現する遺伝子が同定されてきているが、詳細な分子機構はいまだ不明な点が多い。我々は、これまで成体マウスにおいて生殖腺特異的に発現する新規遺伝子GSE (gonad specific expression gene)を同定している (Zhang M et al., 2002 ;Mizuno S et al., 2006)。しかし、この遺伝子が胎子期の生殖細胞において発現しているかは不明であった。本実験では、GSE が生殖細胞の形成に関与しているかどうかを検討することを目的に、生殖細胞形成時期である胎生4.5日(E4.5)~2週齢の胎子及び幼若マウスにおけるGSEの発現解析を行った。【方法】E4.5胚は体外受精により得たものを使用し、E5.5~E18.5の胎子は8~10週齢ICR系マウスの交配により得られた妊娠マウスから胎子及び幼若マウスを得た。E4.5からE11.5胚及び胎子は個体全体を、E12.5以降の胎子及び幼若マウスについては生殖巣のみをそれぞれRNA抽出及びタンパク質抽出し、RT-PCR及びウエスタンブロット解析に用いた。これらの胚、胎子及び組織はそれぞれ3個体分採取した。In situ hybridizationでは、それぞれの個体をBouin固定液により固定、定法に従って厚さ5μmの切片を作製し、DIG標識によりGSEの局在を調べた。【結果】RT-PCR及びウエスタンブロット解析からGSEはE7.5の胎子から発現し、E12.5から卵巣及び精巣で発現していることが示された。また、E7.5~E12.5の胎子におけるGSEの局在は、始原生殖細胞に認められた。マウスにおいて生殖細胞はE7.25から出現することが知られている(Ginsburg et al., 1990)。このことから、胎子期の生殖細胞におけるGSEの発現開始は生殖細胞発生時期からであり、その発生過程において何らかの機能を有する可能性が示唆された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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