日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-31
会議情報

生殖工学
マウスES細胞及びXEN細胞における原始内胚葉系列細胞マーカー遺伝子発現量の比較
*相馬 未來齊藤 耕一細井 勇輔春日 和小林 正之小嶋 郁夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】マウス胚性幹細胞(ES細胞)、及び胚体外内胚葉細胞(XEN細胞)は胚盤胞より樹立され、原始内胚葉系列細胞に分化誘導することができる。しかし、XEN細胞が示す原始内胚葉系列細胞への分化能について、ES細胞と定量的に比較した報告はない。そこで、分化誘導したES及びXEN細胞における原始内胚葉系列マーカー遺伝子発現量を比較し、XEN細胞が原始内胚葉のモデル細胞として適しているか検討した。なお、原始内胚葉系列細胞への効率的な分化誘導方法を検討するために、XEN細胞の分化誘導方法として既に報告されている接着培養法に加え、浮遊培養法も試みた。 【方法】ES細胞は、接着及び浮遊培養法を用いてレチノイン酸による分化誘導を3及び5日間行った。XEN細胞は、接着及び浮遊培養法を用いてマウス胎仔線維芽細胞培養上清非添加培養による分化誘導を6及び10日間行った。Gata4、Gata6(原始内胚葉マーカー)、aFP(近位内胚葉マーカー)、tPA(遠位内胚葉マーカー)発現量をReal-time PCR法により定量し、発現量を比較した。 【結果及び考察】浮遊培養により分化誘導したES細胞では、接着培養と比較してGata4発現量は59倍、Gata6、aFP、tPA発現量は9~18倍高かった。すなわち、接着培養と比較して、浮遊培養では更に原始内胚葉への分化が促進された。一方、浮遊培養により分化誘導したES細胞と比較して、未分化XEN細胞におけるGata4発現量は3倍、Gata6発現量は6倍高かった。同様な比較において、浮遊培養又は接着培養により分化誘導したXEN細胞におけるaFP発現量は、それぞれ10倍、2倍高かった。さらに同様な比較をした場合、XEN細胞におけるtPA発現量は、浮遊及び接着培養ともに約8倍高かった。以上の結果より、ES細胞に比較してXEN細胞は近位・遠位内胚葉への分化能が高いこと、およびXEN細胞においても、浮遊培養ではより近位・遠位内胚葉への分化が促進されることが示唆された。すなわち、XEN細胞は原始内胚葉系列のモデル細胞として適していることが定量的に示された。

著者関連情報
© 2009 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top