日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-32
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生殖工学
代理親魚養殖を目指した ニジマス精原細胞のin vitro培養技術の開発-精原細胞の生存と分裂を促進する因子の探索
*識名 信也吉崎 悟朗
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抄録

【目的】我々は、孵化稚魚の腹腔内に移植された精原細胞が、宿主生殖腺へ移動・生着した後に、そこで機能的な配偶子へ分化することを明らかにしている。精原細胞のこれらの特性を利用した移植技法を、種苗生産へ応用できれば、親魚養成が困難な大型魚種の種苗を、飼育が容易な魚種に生産させる代理親魚養殖も可能になると期待される。さらに移植に用いる精原細胞を、培養下で増殖させる技術が確立されれば、移植を介して、シャーレ内の細胞から魚類種苗を生産できると考えられる。そこで本研究では、精原細胞の培養下での生存、分裂を促す有効な添加因子の探索を行った。【方法】生殖細胞が特異的にGFPで標識されたvasa-Gfp 遺伝子導入ニジマスの未成熟個体の精巣より、高純度でA型精原細胞を含む細胞集団を調整した。有効な添加因子を同定するために、得られた細胞を、栄養性因子やペプチド性因子などを異なる濃度で単一添加した培養液中で培養し、培養14日目における各区の生存精原細胞数を調査・比較した。続いて、同定した有効因子が、精原細胞の生存、分裂、および宿主生殖腺への生着能に与える影響を調査するために、培養14日目において、TUNEL アッセイ、BrdU アッセイ、および、孵化稚魚腹腔への移植実験を行った。【結果】スクリーニングの結果、アデノシン、またはサケ血清を含む培養液を用いた場合に、培養14日目の生存精原細胞数が、対照区と比較して、2倍程度増加することを見出した。またTUNELアッセイ、およびBrdUアッセイの結果、アデノシンは培養下の精原細胞のアポトーシスを抑制し、サケ血清はその分裂を促すことが示唆された。さらに、サケ血清を添加した場合に限り精原細胞の宿主生殖腺への生着能が改善されることを明らかにした。以上の結果より、本研究で同定したアデノシン、サケ血清は、代理親魚養殖を目指した精原細胞の培養系に有効な因子であることが示唆された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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