日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-35
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内分泌
春機発動期前及び分娩後の黒毛和種雌ウシに対するKisspeptin-10の黄体形成ホルモン放出作用
*斉藤 隼人後藤 由希Ahmed Ezzat Ahmed澤田 建八重樫 朋祥中嶋 侑佳金 金山下 哲郎平田 統一澤井 健橋爪 力
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抄録

【目的】近年注目されているキスペプチンの性腺刺激ホルモン放出作用は、ウシではまだ十分検討されていない。本研究は春機発動期前及び分娩後の黒毛和種雌ウシにKisspeptin-10(Kp10)を投与して、この二種の生殖生理環境差が黄体形成ホルモン(LH)放出反応に及ぼす影響を明らかにしようとした。
【方法】春機発動期前のウシには5~6ヵ月齢の黒毛和種雌子ウシ4頭を供試した。分娩後のウシには分娩後75~160日(離乳後1~92日)を経過し、PRIDを7日間挿入したあとの黒毛和種雌ウシ8頭を供試した。Kp10 (5µg/kg b.w.)は頸静脈内に投与した。また分娩後のウシ3頭はGnRH(100µg)を筋注した。採血は投与前及び投与後に頸静脈カテーテルから経時的に行い、血漿中LH濃度の変化を比較した。
【結果】(1) 春機発動期前の雌子ウシ4頭にKp10を投与した結果、全頭で血中LH濃度は急激に上昇した。投与後の頂値は投与前の値に比べ120%高い値を示した。 (2) 分娩後の雌ウシ5頭にKp10を投与した結果、離乳1日目の1頭では反応が見られなかった。またLHが上昇した4頭も雌子ウシに比べ反応が弱く、投与後の頂値は投与前の値の45%の上昇に過ぎなかった。(3) 分娩後のウシ3頭にGnRHを筋注した結果、Kp10投与牛と同様に離乳1日目の1頭では反応が見られなかった。しかし、他の2頭では、投与後の頂値は投与前の値に比べ480%まで上昇した。
【結論】本研究の結果は、分娩後のウシのKp10に対するLH放出反応は弱いこと、しかし下垂体はGnRHに対する強い反応性を持っていることを示す。また離乳直後のウシの視床下部-下垂体系の性腺刺激ホルモン放出機構は低下していることを示唆する。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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