日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-36
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内分泌
視床下部弓状核キスペプチンニューロンの破壊がLHパルスに及ぼす影響
*岩田 衣世大蔵 聡上野山 賀久束村 博子前多 敬一郎
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抄録

性腺刺激ホルモン放出ホルモン (GnRH) のパルス状分泌は視床下部-下垂体-性腺軸の活性維持に重要であるが、そのパルス発生機構は未だ解明されていない。キスペプチンは、GnRH/黄体形成ホルモン(LH)分泌を強く促進するペプチドで、ラットにおいてパルス発生機構が存在すると考えられてきた視床下部弓状核に細胞体が局在する。本研究では弓状核にあるキスペプチンニューロンがGnRH/LHのパルス発生に重要な役割を果たしているとの仮説のもと、弓状核を高周波により破壊し、LHパルスへの影響について検討した。卵巣除去した成熟雌ラットの弓状核全域を高周波により破壊し、LHパルスを検出するための頻回採血を行った。この破壊により正中隆起のGnRHニューロン終末が損傷を受けたかどうかを確かめるため、キスペプチンの活性型部分ペプチド(Kp-10)を破壊後に静脈内投与し、LH分泌を調べた。キスペプチンの細胞体が破壊されているかを確かめるため、実験終了後、側脳室にコルヒチンを投与し、2日後還流固定し、キスペプチンを免疫染色した。その結果、キスペプチンの細胞体が密集する弓状核後方が破壊されている個体ではLHパルスが抑制されていることが明らかとなった。しかしながらキスペプチンの一部の細胞体や線維が存在する弓状核前方が破壊されている個体でもLHパルスの抑制がみられた。Kp-10の静脈内投与により、全ての個体でLHの放出が確認された。以上の結果より、弓状核にあるキスペプチンニューロンがGnRH/LHのパルス状分泌に重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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