日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-41
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内分泌
ラットにおいて新生仔期の精巣由来の性ステロイドは前腹側室周囲核(AVPV)のキスペプチン発現を特異的に脱雌化させる
*本間 玲実岩田 衣世冨川 順子上野山 賀久前多 敬一郎束村 博子
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抄録

我々は以前、新生仔期の性ステロイド感作により前腹側室周囲核(AVPV)のキスペプチンニューロン、 および性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)/黄体形成ホルモン(LH)サージ発生機構が脱雌性化することを報告した。そこで本研究は、この新生仔期の性ステロイドによる制御がキスペプチン特異的であるかを検討することを目的とした。出生直後の雄ラットに精巣除去した群(Neo Cast)、生後5日の雌にestradiol-benzoate(EB)を投与し、成熟後に卵巣除去した群(Neo EB)、成熟後に性腺除去した雌雄ラット(Ad OVXおよびAd Cast群)を設け、各群の半数の動物には成熟後に高濃度エストロジェンを処置した。AVPVに存在し、GnRH/LHサージへの関与が考えられるγアミノ酪酸、グルタミン酸、ニューロテンシン、ガラニンおよびドーパミンニューロンに着目し、これらの遺伝子発現あるいはそのマーカータンパク遺伝子発現を半定量的RT-PCRにより解析した。高濃度エストロジェン処理下でNeo CastとAd OVX群ではAd Cast群に比して有意に高いKiss1の発現を示した。一方、他の神経ペプチドあるいはマーカータンパクの遺伝子であるGad65/67vGlut2NtsGal、およびTh遺伝子の発現は、成熟後のエストロジェン処置の有無に関わらず全群で確認され、新生仔期の性ステロイド環境による明瞭な効果は認められなかった。これらの結果により、新生仔期の性ステロイド感作がAVPVのKiss1発現を特異的に抑制することによりGnRH/LHサージ発生機構を脱雌性化することが示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業により支援されている。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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