日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-43
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内分泌
シバヤギ弓状核キスペプチンニューロン神経活動の制御におけるDynorphin Aの役割
*大蔵 聡若林 嘉浩中田 友明村田 健Navarro VM森 裕司束村 博子前多 敬一郎Steiner RA岡村 裕昭
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抄録

【目的】弓状核キスペプチンニューロンは、パルス状性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌を制御すると考えられている。我々は、シバヤギ弓状核キスペプチンニューロン近傍に電極を留置し、黄体形成ホルモンのパルス状分泌と同期する一過性の多ニューロン発火活動上昇(MUAボレー)を記録する手法を既に確立している。Dynorphin A(Dyn)は、弓状核キスペプチンニューロンに発現しているが、その生理的機能は明らかとなっていない。本研究では、GnRH分泌制御機構におけるDynの役割を明らかにすることを目的とした。【方法】実験には卵巣除去雌シバヤギを用いた。弓状核キスペプチンニューロンにおけるDynの発現を調べるため、免疫組織化学染色およびin situ hybridizationを行った。弓状核キスペプチンニューロン局在部位に記録電極を、また側脳室カニューレを外科的に留置した。対照あるいはDyn(0.2, 2nmol)を脳室内に投与し、その前後における神経活動を解析した。さらに、Dyn受容体であるkappa opioid receptor (KOR) antagonist(nor-BNI)の脳室内持続投与(60 nmol/h, 2h)が、神経活動におよぼす影響を解析した。【結果】シバヤギ弓状核において、Dynはほぼ全てのキスペプチンニューロンに発現していることが明らかとなった。Dyn/キスペプチン陽性線維は、Dyn/キスペプチンニューロンの細胞体近傍に存在していた。また、Dynの脳室内投与によりMUAボレーの頻度が減少し、nor-BNI持続投与によりMUAボレー頻度が増加することが明らかとなった。【考察】弓状核キスペプチンニューロン間におけるDyn/KORシグナル伝達が、オートフィードバック作用を介してキスペプチンニューロン自身の活動を制御することが示唆された。弓状核キスペプチンニューロンに対して抑制作用をもつDynが、刺激作用をもつNKB(若林ら、2009年日本繁殖生物学会大会)と協調し、キスペプチンニューロンの周期的な神経活動を制御すると考えられた。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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