日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-56
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卵巣
ブタ卵胞顆粒層細胞におけるKiss1ならびにGpr54 mRNA発現の解析
*井上 直子平野 隆之岡村 裕昭上野山 賀久束村 博子前多 敬一郎
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抄録

【目的】キスペプチンはGPR54の内因性リガンドとしてヒト胎盤から同定されたKiss1遺伝子にコードされるペプチドで、視床下部での性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌調節において重要な役割を果たしていることが、近年報告されつつある。性腺においてもKiss1遺伝子が発現することが報告されているが、その機能は未だ解明されていない。我々はこれまでにブタ卵巣においてキスペプチンが原始、一次、二次卵胞、卵胞腔が完全に形成されるまでの三次卵胞(初期三次卵胞)の顆粒層細胞に発現していることを報告している(第101回日本繁殖生物学会)。本研究では卵巣におけるキスペプチンの生理作用を明らかにすることを目的に、ブタ顆粒層細胞におけるkiss1ならびにGpr54 mRNA発現を検討した。【方法】16μmのブタ卵巣未固定凍結切片を作成し、マイクロダイセクションシステムにより二次卵胞、初期三次卵胞、三次卵胞の顆粒層細胞を採取した。採取した組織からRNAを抽出しKiss1Gpr54Fshr mRNA発現をRT-PCRにより検討した。【結果および考察】Kiss1 mRNAは二次卵胞および卵胞腔が形成されはじめた初期三次卵胞の顆粒層細胞で発現が見られ、三次卵胞の顆粒層細胞では発現が消失していた。一方Gpr54 mRNAはいずれの顆粒層細胞にも発現は見られなかったが、卵胞膜細胞において発現がみられた。卵胞発達の指標となるFshr mRNAは二次卵胞では発現がみられず、初期三次卵胞、三次卵胞の顆粒層細胞にのみ見られた。これらのことよりブタ顆粒層細胞におけるKiss1遺伝子発現はキスペプチン発現と一致し、初期三次卵胞までの顆粒層細胞でキスペプチンが産生されていることが示唆された。また卵胞膜細胞にGpr54遺伝子が発現していたことより、顆粒層細胞で産生されたキスペプチンは卵胞膜にパラクリン作用し、卵胞発育に関与している可能性が示唆された。本研究は生研センター基盤研究推進事業によりサポートされています。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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