日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-57
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卵巣
ウシ黄体でのVEGF-Vasohibinシステムの発現と調節
*小林 明由未笹原 希笑実白砂 孔明赤刎 幸人松井 基純清水 隆宮本 明夫
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抄録

【目的】ウシ黄体は活発な血管新生やプロジェステロン(P)合成を伴って形成される。成熟した黄体は50%以上の血管内皮細胞(EC)と30%程度の黄体細胞(LC)から成り、血管が密に存在している。しかし、妊娠不成立時には子宮からのプロスタグランジンF(PG)の刺激で血管機構が崩壊し、P分泌が減少して黄体は退行する。このように黄体の形成から退行までには厳密な血管調節機構が存在する。本研究では、黄体の主要な血管新生促進因子である血管内皮増殖因子(VEGF)の作用に抑制的に働く血管新生抑制因子Vasohibin(Vh)に着目し、ウシ黄体でのVEGF-Vhシステムの存在とその調節機構を調べた。【方法】実験1 : 食肉処理場由来の黄体を初期(day2-5)、中期(day8-10)、後期(day13-15)、退行期(day17-19)に分類し、黄体組織を採取した。実験2 : magnetic beadsを用いて初期黄体からECを単離し、残った細胞をLC分画とした。ECにVEGF(1,10,20,50,100 ng/ml)を添加し、24時間後に細胞を回収した。実験3 : 初期黄体(day4)または中期黄体(day10-12)を持つウシにPGまたは生理食塩水を投与し、1時間後に卵巣を除去し、黄体組織を採取した。実験4 : 初期黄体または中期黄体から単離したEC、LCにPG(10-6M)を添加し、2時間後に細胞を回収した。各遺伝子発現はreal-time PCR法を、各タンパク質発現はウエスタンブロット法を用いて測定した。【結果】実験1 :黄体期初期、中期、後期に比べ退行期においてVEGF、Vhのタンパク質発現が低かった。実験2 : 50ng/mlのVEGF添加によりVh mRNA発現が上昇した。実験3 : 初期黄体においてPG投与後1時間でVEGF、Vh mRNA発現が上昇したが、中期黄体ではどちらも減少した。実験4 : 初期黄体から単離したEC、LCでPG によりVEGF mRNA発現が刺激され、Vh mRNA発現はLCでのみ刺激された。中期黄体から単離したLCではPGによりVEGF mRNA発現のみ刺激された。以上からVEGF-Vhシステムがウシ黄体に存在し、初期黄体と中期黄体ではVEGF-VhシステムのPGに対する反応性に違いがあるということが示された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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