日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-20
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生殖工学
ウシ精巣中の性成熟にともなう生殖幹細胞の動態と体外培養について
*藤原 摩耶子金 聖民南 直治郎山田 雅保今井 裕
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抄録
【目的】Gonocyteは幼若期の精巣中に存在する生殖細胞であり、精原幹細胞と同様に多能性幹細胞としての性質をもつ。本実験では、幼若期から性成熟後までの精巣内の生殖幹細胞について、その特異的マーカーによって発現動態を観察するとともに、Gonocyteの体外培養の可能性について検討した。 【方法】生後1週齢、性成熟期、性成熟後のウシ精巣組織の一部を固定し、生殖細胞マーカーであるDBA、UCHL1、DDX4、また、幹細胞マーカーであるNANOG、POU5F1について免疫染色を行った。一方、体外培養のために、1~2週齢の精巣からGonocyteを単離した。その後、10%FBSを含むDMEM/F12培地で培養し、培養4日から7日目に継代を行うとともに、生殖細胞マーカーと幹細胞マーカーの発現を検討した。 【結果と考察】Gonocyteは生後1週齢から3か月齢まで精細管内中央に位置し、大きな核をもっていた。生殖細胞マーカーで免疫染色した結果、DBA、UCHL1、DDX4に陽性、幹細胞マーカーであるNANOGにも陽性であった。5か月齢以降になると、これらの発現を保持したまま基底部へ移動し、精細管内の細胞数は増加した。性成熟後には、基底膜上の幹細胞は幼若期と同様のマーカーを継続的に発現するが、分化細胞ではDBAとUCHL1の発現は低下した。 1~2週齢の精巣由来のGonocyteを体外培養したところ、3日目には不定形の細胞塊を形成し、DBA、UCHL1、DDX4に陽性、NANOGやPOU5F1にも陽性であることが確認された。これらの細胞を継代すると、上記と同じマーカーに陽性を示すコロニーが現れた。これらのコロニーは少なくとも継代6回目まで観察され、BrdU染色によって細胞増殖を確認し、POU5F1遺伝子の発現も維持されていた。 以上のことから、幼若期ウシ精巣中のGonocyteはDBAやUCHL1と同様にDDX4にも陽性であり、成長因子を添加することなく、少なくとも継代6回目までは幹細胞の性質を維持したまま培養が可能であった。また、免疫染色の結果から、5か月齢以降の精巣では、精細管基底部に定着した生殖細胞はGonocyteと同様の生殖細胞マーカーを維持していることが観察された。
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© 2009 日本繁殖生物学会
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