抄録
【目的】クローン家畜は体細胞を除核卵子へ核移植することによって生産されるが,生産個体のミトコンドリア機能への影響は不明である。梅山豚とランドレースのミトコンドリア遺伝子の塩基配列は異なっているが,今回我々は,異品種のドナー細胞とレシピエント卵子を用いた核移植により作出したクローンブタについて,Ettan DIGEシステム(GEヘルスケア)を用いたミトコンドリア蛋白質発現差異について検討したので報告する。【方法】 梅山豚の胎子線維芽細胞をランドレースもしくはLW(ランドレース×大ヨークシャー)の除核卵子に移植して作出したクローンブタ3頭(成豚),対照群として梅山豚3頭,ランドレース 2頭からそれぞれ肝臓を採取し,遠心分画法によりミトコンドリア画分を調製した。2次元電気泳動は,予め3色の蛍光色素CyDyeで標識したミトコンドリア蛋白についてEttan DIGEマニュアル(GEヘルスケア)に従って行った。各スポットの発現差異解析はDIGE解析ソフトウェアのImage Master 2D Platinum(GEヘルスケア)もしくはPDQuest8.0(Bio-Rad)により行った。【結果】 クローンブタと梅山豚の比較において,蛋白質発現量が2倍以上差異のあるスポットは,35~47個検出された(P < 0.05)。一方,梅山豚とランドレースの比較において,蛋白質発現量の2倍以上差異は4~7スポット検出されたが(P < 0.05),クローンブタと共通したスポットは検出されなかった。したがってクローンブタで検出された差異は,ミトコンドリア遺伝子の相違に因るものではないと推察された。クローンブタにおいて発現量に3~4倍の増加が検出された蛋白質について同定解析を行ったところ,ミトコンドリア内酵素であるHMGC2と同定された。