日本繁殖生物学会 講演要旨集
第103回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-83
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生殖工学
近交系Brown-Norwayラット胚盤胞に由来するES細胞株の樹立と外来遺伝子導入個体の作製
*加藤 めぐみ三宝 誠小林 俊寛中内 啓光保地 眞一平林 真澄
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抄録
【目的】FGF、MEK/ERK、TGF-β等の分化誘導シグナル伝達系の阻害剤と、ES細胞の増殖に必須のβカテニンのシグナルを抑制するGSK3の特異的阻害剤を培養液に添加すれば、ラットでもES細胞株が樹立できる (Cell 135; 2008)。本実験では、近交系Brown-Norway (BN)ラット由来の胚盤胞からES細胞株を樹立すること、そしてKusabira-Orange遺伝子 (CAG/huKO-neo) を導入したES細胞からキメラおよびTgラットを作製することを試みた。
【方法と結果】BN/Crljラット由来のE4.5胚盤胞10個を、FGFレセプター阻害剤、MEK活性化阻害剤およびラットLIFを含むN2B27培地でマイトマイシン処理マウス繊維芽細胞上に播種した。6日後に増殖したICMを単離し、小塊に崩して3日間培養した。0.05%トリプシン処理を経て増殖コロニーを数回継代し、4ラインのES細胞株を得た。このうちSry陽性の細胞株 (1×106個) を用い、CAG/huKO-neo遺伝子 (25 µg) をキュベット (500 µl) に入れ、800 V、10 µF、抵抗∞のパルス条件でエレクトロポーレーションをかけて60-mmディッシュ上に播種した。3日後にG418 (200 µg/ml) を添加し、4日後の生存コロニーからKusabira-Orange発現コロニーを回収した。これらのES細胞10個をアルビノラット由来のE4.5胞胚腔内に顕微注入し、移植胚91個から34匹 (37%) の産仔が生まれ、うち25匹 (74%; ♂14、♀11) が毛色キメラだった。産仔率、キメラ産仔率とも、遺伝子非導入の陰性対照ES細胞での結果 (それぞれ38%と89%) と有意な差はなかった。♂のキメラ9個体と野生型♀ラットとの交配により計118匹のF1産仔を作出したところ、1キメラ個体に由来するF1産仔25匹中の6匹がCAG/huKO-neo遺伝子を発現していた。以上、ラットES細胞を介してTgラット(F1世代)を作製することに初めて成功した。
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© 2010 日本繁殖生物学会
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