日本繁殖生物学会 講演要旨集
第103回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-25
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卵巣
ウシ黄体退行中における迅速な好中球浸潤と好中球動員機構
*白砂 孔明Jiemtaweeboon SineenardSybille RaddatzHeinrich BollweinHans-Joachin Schuberth清水 隆宮本 明夫
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抄録

【目的】黄体は妊娠成立・維持に重要であるプロジェステロンを産生する。ウシでは妊娠不成立の場合,PGF(PGF)が子宮から放出され,黄体機能低下と構造崩壊が起きる。免疫応答を司る白血球の一種である好中球は,炎症部位に速やかに動員され貪食殺菌を行う,最も重要な生体防御機構を担う。退行中の黄体内ではマクロファージやリンパ球が動員されるが,ウシ黄体退行中の好中球の局在・動員機構および黄体機能における影響は不明である。本研究では,炎症局所に迅速に動員される好中球に着目し,退行中のウシ黄体内への好中球動員および動員機構を検証した。 【方法】実験1:中期黄体(Days 10-12)を持つウシにPGFを投与(=0 h)し,0,5,15,30分および2時間で卵巣を採取した。黄体を回収し,PAS染色で好中球数を,real-time PCR法で好中球遊走ケモカイン(interleukin-8:IL8)および白血球接着分子(E-selectin)の遺伝子発現を解析した。実験2:発情周期中期のウシ末梢血から好中球を単離し,PGFによる好中球遊走アッセイを行った。また,好中球におけるPGF受容体(FPr)の遺伝子と蛋白発現を調べた。実験3:中期黄体由来血管内皮細胞(EC)にPGFを添加して5分後に細胞を固定し,E-selectinの蛍光免疫染色を行った。 【結果】実験1:PGF投与後5分で黄体内好中球数が有意に増加した。IL8 mRNA発現はPGF投与後30分で増加したが,E-selectin mRNA発現は5-30分で減少した。実験2:好中球でFPr は発現せず,PGFは好中球遊走性に影響しなかった。実験3:PGF添加後5分でECにおけるE-selectin発現が増加した。 以上から,ウシ黄体退行現象ではPGFは全身系で好中球に作用するのではなく,PGFが黄体内血管内皮細胞のE-selectin発現を迅速に刺激し,好中球の血管内皮細胞への接着が増加することで,黄体内に好中球が5分で動員されることが示唆された。

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© 2010 日本繁殖生物学会
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