日本繁殖生物学会 講演要旨集
第103回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-9
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内分泌
アネキシンA5ノックアウトマウス(AX5KO)で見られた産仔数の減少
*植木 紘史西村 育広リエンラクオン ドワンザイ米澤 智洋久留主 志朗エルンスト パーセル汾陽 光盛
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抄録
 アネキシンA5は、カルシウム依存性にリン脂質に結合する蛋白質であり、細胞内シグナル伝達や胎盤由来の抗血液凝固因子として機能することが推定されているが、未だ実際の機能は明らかでない。我々はAX5KOで2割ほど産仔数の減少することを観察した。本研究では、AX5KOで見られた産仔数の減少についてより詳細に検討した。AX5KOの産仔数は、初産、経産、母体の日齢にかかわらず、野生型マウス(C57BL/6J)と比べ有意に少なかった。膣スメアを観察し、発情期午前中に卵管内の卵を数えると、AX5KOとC57BL/6Jに差は見られず、排卵数には差のないことが明らかとなった。そこで、妊娠12日目と18日目に胎児数を調べると、妊娠12日目の胎児数は排卵数と差がなく、18日目に減少することが示され、妊娠後半に胎児の損耗することが明らかとなった。AX5KOとC57BL/6Jの交差交配実験を行うと、AX5KOが母胎の時にのみ産仔数の減少が見られ、妊娠後半の母胎の妊娠維持機構に何らかの障害のあることが示された。AX5KOの妊娠18日目には、子宮内に他より明らかに小さな胎児の混在することが観察され、子宮内で発育の遅延後に胎児の消失することが示唆された。マウスに頚静脈カニューレを装着し、低ストレス環境下で採血し黄体刺激ホルモンであるプロラクチンを測定したが、AX5KOとC57BL/6Jの間に差は認められなかった。両者の性周期、妊娠期間に差はなく、血中イオン濃度、白血球数と組成にも差はなかった。心採血によって得た血液(0.5 ml)を37℃で完全に凝固するまでの時間を測定すると、AX5KOで凝固が速やかに起こることが示された。以上の本研究の結果から、まずAX5KOで見られる産仔数の減少が、妊娠後半に母胎側の影響によって生じることが明らかになった。更に、AX5KOで血液凝固が起こりやすかったことから、ヒトの抗アネキシンA5自己抗体保有者で疑われている胎盤内血栓による流産との関連が推定された。
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© 2010 日本繁殖生物学会
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